『フォルトゥナが微笑むまで』第3回:そして感応時間12に取りかかり始めた

フォルトゥナが微笑むまで:第3回

ご無沙汰しています。シナリオライターのかほく麻緒です。

第2回から引き継ぎ第3回を担当させていただきます。第2回の流れから、当時の苦しかったスランプ、そして感応時間が生まれた瞬間のことを。

──それは、不定期に訪れるこの世で一番恐ろしい『スランプ』という状態の最中、島田がほぼほぼ私のために企画してくれた、檜原村行き直前から始まります。

終わりの見えない真っ暗闇のスランプ中、出口を求めてシナリオを書き続けていた。

数時間後には、出発しなければ。しかしシナリオは終わらない。書いても書いても終わらない。さして量があるわけではない。けれど終わらない。それは私がスランプだからだ。書けども書けども、いつものように速くは書けない。その上、気にくわないので何度も自分リテイクをしなければならない。涙がこぼれてくる。泣きながらシナリオを書き続けた。

時間は出発2時間前となり、その瞬間。

速度が、ほぼ4倍になった。嘘でも例えでもない。4倍になった。いつものことだけれど、苦しみながら書き続けた結果、ふと……何かのスイッチを入れたかのように、その時は訪れる。スランプ脱出の瞬間だった。

無事シナリオを終え、島田を迎えに行く。高速に乗る。ひっそりと涙が滲んだ。ああ、今回も脱出できたと……。

これまでスランプから立ち直らなかったことはなかった。けれども、あの暗闇の中ではいつも思う。私はもう二度と抜けることはないのだと。

高速に乗り、たくさんの話をした。企画のことを話し、仕事のことを話し、その内に不思議と頭がクリアになってくる。頭の中にずっと広がり続けたモヤも晴れた。

自然を堪能し、檜原村から戻っても仕事は山積みで休む暇もないのだが、それでよかった。それが幸せだと、以前のように思えるようになっていた。解放された。

──大丈夫。感応時間が書ける。

そう、確信した。

檜原村に一泊し、帰り道もまた話をする。くたくただった。体の疲れとは裏腹に、早く一刻も早く、感応時間が作りたかった。

「すぐプロット上げるので、確認お願いします」

「必要ないと思う。感応時間に、がちがちのプロットは必要ない」

私達は、ステージアップしたと思う。詳細なプロットが必要な作品と、感性と感情の流れのみが必要な作品を、かぎ分けることができるようになった。必要なものを必要な時に作成する。

そして今は、詳細な構成など不必要だった。

プロットや詳細な設定は、発想をそこに縛りつける。それ以上のものを生むことはできない。私は、1時間のドラマを描くことに、全身全霊をかけて注力した。

特典CDやSSはプロットを作成しそれを元に執筆している。

またこれからも、スランプには陥り続けるだろうし、未熟でも在り続けるのだろう。
ただ、これまで私が多くの人と出会い思ってきたことと同じで、誰かの心を惹きつけるものは、必死に手を伸ばした先のもの、精一杯背伸びをして作ったもの、苦しみの果てに作り上げたもの……。そういうものに違いない。

そう私は信じて、これからもシナリオを書き続ける。

第4回は10月17日公開予定。

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3年ぶりの新作は

【2016/11月25日(金)発売予定】感応時間12 ~フォルトゥナに魅入られた男~(CV:立花慎之介)