第37話「待ち遠しくて」

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第37話 待ち遠しくて

草木も眠る深夜。その城には夜な夜な恐ろしい声が響きます。

その声は世にも恨みがましく、さみしげで、耳にした者は

一睡もできなくなるといいます。そう、ちょうどこんな風に……

霊?・クモ

サソリ……

サソリ・悲しみ

うーん……ぐぅ~……

霊?・クモ

サソリ……サソリぃ……

サソリ・悲しみ

うぐ、ぐぅ……うー……

クモ・怒り

サソリ……サソリ……サソリ……!

サソリ・怒り

ぅぅぅうるっせー!! またお前かよ。毎晩、耳元でそうやってささやくのはやめろ!

クモ・怒り

うるさい! 貴様、いつになったら彼女を見つけ出すのだ!

サソリ・基本

またその話かよ……だから言ってるだろ、まだ感じないって

クモ・基本

おかしいではないか! 前世の彼女を看取って、いったい何年になると思っている! もうとっくに転生していていいころだろう

サソリ・笑顔

たしかに、そろそろ転生してるくらいの時期だけどさ。ほら、10代前はかなり遅かっただろ? 今回もそんな感じだって

クモ・悲しみ

3代前は5年で転生したではないか……

サソリ・基本

あんなレアケース持ち出してすねるなよ

クモ・怒り

黙れ! なぜ貴様はそう平然としていられるのだ。彼女がいないというのに、のんきにグースカ眠りおって……!

サソリ・基本

そりゃ夜だからな。昼夜逆転なだけで、お前もさっきまでグースカ寝てたじゃねえか

クモ・見下し

ふん、やはりお前のような軟弱者とは価値観が違うのだ

クモ・見下し

運命でつながった彼女の行方が知れない。そのことで心を痛める私の胸中など、ガサツで乱暴者のお前には分からんだろう!

サソリ・怒り

なんだとぉ!? 自分ばっかり傷付いてる顔でお高くとまりやがって。もう探してやんねーぞ!

クモ・怒り

貴様、この誇り高き吸血種たる私を脅迫しようというのか!?

サソリ・笑顔

オレだって吸血種だ。でも困るよなぁ? 吸血種なのに、あいつの匂いを感じられないクモさんは

クモ・悲しみ

ぐ……っ! 貴様、それ以上は許さんぞ

サソリ・笑顔

オレがいなかったら、さみしーよーさみしーよー、ってピーピー泣くことしかできねぇんだから

クモ・怒り

誰も泣いてなどいない! いい加減にしないと、城から追い出すぞ!

サソリ・基本

別にオレは野宿慣れしてるからいいけどな

クモ・基本

野宿だと!? そんな野蛮なことを平気でするようなお前には、彼女を任せることはできん

サソリ・笑顔

でもお前一人じゃ、あいつを探すことはできないもんなー?

クモ・基本

ここぞとばかりに偉そうな顔をしおって……! いいのか、私が彼女と会えないショックでやけ食いに走っても

サソリ・悲しみ

なーにがやけ食いだ、女子かお前……ん? 吸血鬼のお前がやけ食い……?

クモ・基本

そうだ。老若男女手当たり次第、目についた奴から吸いつくす

サソリ・基本

お前くらいの吸血鬼がそれをやったら、歴史に残る大事件になるな

クモ・笑顔

私は構わん。貴族というだけで、私は犯罪とは無縁に扱われるからな

サソリ・悲しみ

そんな事件が起きてる中で野宿してたら、見つかって即『ちょっと署まで』されちまう……

クモ・見下し

では、改めて聞こう。サソリ、お前は誰の城に住ませてもらっているのかね?

サソリ・基本

そうやって調子に乗ってるとな、あいつを見つけても教えてやらねえぞ

クモ・基本

彼女が遠くの国に転生していたとき、旅費を出しているのは私だ。お前が遠出すると言えばすぐに分かる

サソリ・怒り

ぐぬぬぬぬ……

クモ・悲しみ

……よそう。不毛な争いだ

サソリ・基本

それもそうだな。オレはお前の財力、権力を使って暮らしてる

クモ・基本

私は自由なお前に、私のできないことをやってもらう。補いあっている部分をけなしては、争いにもなる

サソリ・笑顔

こんなとき、あいつがいたら泣きそうな顔で割って入ってくるんだろうな

クモ・笑顔

目に浮かぶようだ。私とお前がケンカしていると、どこからでも聞きつけて飛んでくるからな

サソリ・笑顔

転生を待って、何年になるんだ? そろそろ会いたいよなぁ

クモ・悲しみ

まったくだ。どこぞの落ちこぼれ吸血鬼が早く探し出してやらないから、彼女もさぞかしさみしい思いをしているに違いない

サソリ・怒り

おい今なんつった!?

クモ・見下し

落ちこぼれ、劣等生、ごくつぶし。貴様のような働かない奴を、最近では『にーと』と呼ぶらしいぞ

サソリ・怒り

さっきよりひどくなってんじゃねーか! ていうか、働かないのはお前も一緒だろ!

クモ・笑顔

貴族の仕事は領地の管理だ。お前がうろうろしている町で、犯罪が起こらないように警官を手配しているのは私だぞ

サソリ・基本

あんまり言ってると探してやらねーぞ! っと……ちょっと待て

クモ・基本

どうした。急に天井を見上げて

サソリ・笑顔

来た、来た来た来た……! 今感じたぞ、あいつの魂だ!

クモ・笑顔

なんだと!? ということは、ついに彼女を探しに行けるのか!?

サソリ・基本

あぁ、任せとけ。しっかり連れてきてやるよ

クモ・基本

いや、今回は私も行こう。いつもより待たされているぶん、一刻も早く会いたい

サソリ・基本

大丈夫かよ。お前、昼間は……

クモ・怒り

夜に行動すれば問題ない。では出発だ。今すぐ

サソリ・悲しみ

今すぐ!? せめて少しは寝かせてくれよ。準備もいろいろいるし

クモ・見下し

悠長なことを。では明日だ。明日の同じ時間に迎えにくるからな。では食事に行ってくる

サソリ・基本

はいよー。って、同じ時間じゃけっきょく夜中……! あーあ、行っちまった

サソリ・笑顔

仕方ねぇ、オレも明日は昼寝すっか

こうして、運命の相手の転生を知ったクモと
サソリは、旅に出ることになりました。

仲がいいのか悪いのか分からないこのコンビは、
無事に彼女を見つけることができるのでしょうか?

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