二十世紀初頭、ヨーロッパ──
かび臭い拷問室で、
男は貴女の耳元へ唇を寄せ、囁いた。
闇の中、獣のごとく菫色の瞳を光らせて……。
「そうか、貴様は知りもしない男に体を暴かれるのが好きなのだな?」
その時のことを、貴女は今でも思い出す。
軍人ユーリに尋問をされたあの日、
拘束され、女性として辱めを受けたことを……。
それから屈辱と悔しさを胸に、貴女は生きて来た。
けれどその心にあったのは本当に、復讐心だろうか……?
――自然と、貴女の足は薄暗い部屋を目指す。
聞こえてくる……男を縛る鎖の音。
感じられる……貴女を見据える男の、鋭い眼光。
「くっ、なぜこの私が、このような目に――!」
向かうは貴女を狂わせた男のもと。
求め求めた、ユーリのもと……。
心の澱を今はまだ、甘く水底でくすぶらせたまま、
貴女は、ほの暗い深部へと導かれてゆく――。
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配信日
2018年5月9日
2018年5月9日
2018年5月9日