[ スペシャル ]
プレリュードSS
ピリピリする頬の内側へ舌を這わすと、鉄臭い血の味がした。
「いってぇ……」
ひとり歩いていた龍之介は、電柱の足下に唾を吐き出す。
衣替えしたばかりの夏服が、土埃と泥水で汚れていた。
ケンカなんて天に唾吐くようなものだ。人を殴って鬱憤を晴らしても、最後には自分に返ってくる。
それなのに不良仲間とつるんでは、あちこち遊び歩いて、ケンカするくらいしかやることがなかった。
学校なんてつまらない。家にも居場所なんてない。
龍之介は自分を持て余していた。
「おう、どうしたその顔」
普段あまり通らない道だった。
しかも夜。こんな場所で人に話しかけられるとは思わなかった。
世話好きな田舎の人間も、体格のいい不良にわざわざ話しかけてはこないものだ。
龍之介は痛む顔を歪めて相手を見る。
紺の作務衣に前掛け。短く切られた頭髪には白いものが混じってみえた。
ここの旅館の板前だろうか。
目の前には高級旅館の裏口がある。
板前は魚のあらを入れたボウルを小脇に抱えていた。魚のあらを無造作に、庭先の生ゴミ処理機にぶち込んだ。
「有り余ってんなあ、お前」
「うるせぇ。他にやることなんざねぇんだよ」
思わず言い返す。
その瞬間だった。少し開いた戸口から温かな汁物の香りがふわりと香ったのは。龍之介の腹の虫がぐう、と鳴った。
「お前、メシ食うか?」
「は……?」
一瞬何を言われたのかわからなかった。
「腹減ってんだろ? これから賄いだ」
「誰が」
だが、白米の炊ける香ばしい匂いに、さらに龍之介の腹の虫が鳴りだした。
「おお、それが返事か」
それからどうやって中まで付いていったか覚えていない。
気が付くと調理場の隅にあるテーブルにいた。
賄いというから丼物か何かかと思ったら、焼き物に煮物、蒸し物に和え物と、何品もある。
「食え」
つっけんどんに箸を押しつけられ、食べ始めた。
若い食欲に突き動かされ、ひたすら箸を動かす。
不思議だった。口の中は切れて痛いのに、その板前――その時聞いた話によると旅館『潮竜館』の料理長――の料理は信じられないくらいに美味しくて……。
目が覚めた気がした。退屈なこの町に、こんなに深い味の世界があったのかと。
それから龍之介は弟子にしてくれと頼み込み、高校卒業と同時にその店で修行をすることになった――。
けれども料理修業は順調には進まなかった。
早朝からの料理の仕込み、朝晩の膳の準備に後片付けと、旅館の調理場は戦場さながらだ。
時間に追われるぴりぴりした環境で、足手まといでしかない新入りへの風当たりは強い。
そこをどけ! モタモタするな! やる気がないなら出ていけ!
周囲から投げつけられる言葉は愛のないものばかり。
それどころか下手をすれば拳が飛んでくる。
ぐっと堪えるしかなかった。
「つうっ……。やっぱ腫れちまったか」
仕事が終わり、ようやく帰った寮の部屋で、痛む口端に絆創膏を貼った。
夕餉の片付けをしているとき、鍋の洗い方が汚いと難癖をつけられ、三年上の先輩に殴られたのだ。
日本料理の世界では、下積み三年、一人前になるのに十年と言われている。
あの先輩の下で、その時間をやり過ごすと思うとたまらない。
(辞めてやろうか!)
ふつふつと沸き起こる怒りに、救急箱のふたを閉じる手が震えた。
(そうだ、こんな店俺には不相応だった。料理人になれるかもわからねぇ。どうせ続かねえ!)
胸の中で、呪詛を吐き散らしていたとき――。
――りゅうにい。
鈴のような声が聞こえてハッとした。
小さな盆を手にやってくるのは、この旅館のお嬢さんだった。お嬢さんといってもまだ年は十歳そこそこだ。
――おにぎり、一緒に食べよう。
彼女が座卓に置く。おにぎりはいびつな形をしているけれど、丸くて小さくて、彼女自身のようだった。一方で、龍之介がとっさに鏡を見ると、自分の顔は怒りで歪んでいる。龍之介は息を深く吐いて、精いっぱいの笑顔を彼女に向けた。
「いいんですか? 俺が食べても」
こんな特別なおにぎりを、何者にもなりきれない自分が食べてしまうのは申し訳ない。
彼女が小さな手にひとつとって、龍之介の顔の前へ差し出した。
その健気な仕草を見るとたまらなくなってしまい、龍之介は受け取ったおにぎりをおずおずと口に含む。
優しい味のおにぎりが、口の中でほろりとほどけた。
思わず涙が出そうになる。
潤む目をごまかすように問いかけた。
「美味いです。女将さんと作ったんですか?」
すると彼女はこういった。
――うん、りゅうにいが作ってくれるの思い出して作った。
血もつながってないのにりゅうにい、りゅうにいと名前を呼んで、毎日慕ってくれる、その少女が愛おしかった。
(俺が辞めたら……がっかりさせちまうだろうな……)
おにぎりを噛みしめながら、龍之介は数分前の決意をひるがえす。まだ辞められない。
お嬢さんの健気な想いを、何があっても裏切りたくないと思った――。
あれから十数年。
耐え抜いた龍之介は、一人前の板前になった。
一方お嬢さんはすっかり大人になって、都会の会社で働いている。
盆正月に帰省する彼女と顔を合わせるのが、今の龍之介にとっては小さな楽しみだ。
「龍之介さん聞いた? お嬢さん帰ってくるって」
ある晩、宴会場の片付けをしているときに、年配の仲居から聞かされる。
膳を重ねて持つ手が止まった。
「え……。今年は早いですね、いつもなら帰ってくるのは盆なのに」
「そうじゃなくて……」
なんでも女将が倒れたことをきっかけに、跡継ぎ候補として呼び戻されるらしい。
「ってことはお嬢さん、この旅館を継がれるんですか?」
「まだ決まったわけじゃないみたい」
仲居にそう言われ、龍之介ははやる胸の鼓動を抑える。
でも……。
お嬢さんと一緒に働けるなら、焦らず腐らず料理人を続けてよかったと思う。
彼女がいたから続けられた。今の龍之介があるのは彼女のおかげだ。
龍之介はその事実に思いを馳せる。
「……帰ってくるんだ……」
膳を下げる廊下でひとりつぶやくと、あの頃のおにぎりが、口の中でほろりとほどけた――。
その頃、田舎の映画館といったら狭くて暗くて音響もイマイチな場所だった。
北の温泉街に伸びる映画館の裏通りには怪しげな看板を掲げた店が立ち並び、夜になると妙な活気を帯びる風俗街があった。昼間はひっそりとしているくせに、町の秘密めいた空気の一部となっていた。
そのくせ鑑賞料は都会と変わらない。今から十年前、大人1800円、学生1500円だったと思う。
そんなパッとしない映画館が、十七歳の町宮朔にとっては居心地のいい場所だった。
理由は当然映画が好きなこともあったけれど、同じアルバイトの彼女と過ごすひとときが、朔にとって幸せな時間だったからだ。
一つ年下の彼女とは、好きな映画の話題を中心に、気軽になんでも話せる仲だった。
昭和の時代に建てられた映画館の入り口には、レトロな書体で「いらっしゃいませ」の文字が躍っていた。朔はその文字を見るたびに、この古びた映画館の温もりを感じるのだった。
その午後、彼女は受付に立ち、朔は「いらっしゃいませ」の文字を横目に建物前の道を掃いていた。
いつも通りの何もない平日かと思ったら、めずらしいやつらが朔のいる映画館を訪れる。
「やあ、朔くん。今日バイト?」
同じ高校の、あまり評判のよくない先輩たちだった。
朔は彼らと深い付き合いがあった。周囲から見れば朔自身も、彼らの不良仲間に当たるのだろう。酒びたりの父親を探しにパチンコ屋を巡り歩くうちに、この界隈に詳しくなり、尊たちとの付き合いにつながったのだ。後輩にあたる彼女がそれを知らないのだけが朔の救いだった。
「ああ、尊先輩。今日は何か用っすか?」
朔は軽く会釈をしながら、内心で緊張していた。
尊という名の先輩は不良グループのリーダー格で、地元の有力者の息子だ。彼が声を荒げるのを見たことがない。品行方正で教師からの信頼は厚く、親から守られ、そして――本性は腐りきっている。そういう男だった。朔は彼に様々な「サービス」を提供してきた。
「ね、この前紹介してくれたオネーサン、すごく良くてね。今日はこいつらにも、と思ってさ」
尊の言葉に、朔は表情を変えずに応じた。
「あー、本当ですか、嬉しいな。でもあの人、まだ出勤してないんじゃないかな……」
ところが尊の目が受付にいる彼女に向いた。
「あの子かわいいね。あの子も紹介してくれない?」
その瞬間、朔の中で何かが凍りついた。
「いや、あいつはダメですよ」
朔は必死に笑顔を保ちながら答えた。
「なんでだよ。もしかしてお前の女?」
別の先輩が意地悪そうに言う。
「付き合ってないです。ただのバイト仲間」
事実だった。
けれど好きなのかと聞かれたら、答えはイエスなんだろう。みすみす他人に渡すことを考えたら、耐えられないくらいに胸が苦しいのだから。
「やめなよ。朔くんが困ってるじゃないか。じゃ、またね、朔くん。お仕事頑張って」
尊は少し残念そうに肩をすくめて笑った。同級生が尊の笑顔ひとつにきゃあきゃあ騒いでいるのを見たことがある。それも頷けるような一点の曇りもない笑顔。
それから立ち去る先輩たちと入れ違いに、彼女がカウンターを離れてやってくる。
――大丈夫? あの人たち。
通りの角を曲がっていく先輩たちの背中を、彼女の視線が見送った。
「なんでもないよ、世間話してただけ」
ウソだと勘づいているんだろう、彼女は心配そうな顔で朔を見つめる。
「それより、この前言ってたパニック映画!」
朔は話を逸らすため、ふたりの間で話題のB級映画のタイトルを口にした。
「前に録画した続編のビデオが見つかったから、時間あるときウチに来いよ」
苦し紛れの誘いだった。けれど彼女は意外にノリノリでうなずいてくれる。
「貸りてく? それともウチの談話室で観る?」
図らずも、バイト後の彼女を自宅へ招くことになった。
朔の実家は民宿を経営している。昔ながらの日本家屋の余っている部屋を、旅行者に貸しているのだ。
彼女を招いた談話室も、民宿の共有スペースの一部だった。
骨董品に近いVHSのビデオデッキが談話室にはある。
「ほらあった、こいつだ」
手書きのシールを確認し、棚からビデオテープを引き出す。
今日は民宿の客もいないから、彼女とふたりでゆっくり映画を観られるはずだ。
ところが冒頭数分のところで、思わぬ闖入者が現れた。
酒の匂いを漂わせた朔の父親だった。
「なんだ、いっちょ前に女なんか連れ込んで。ちょっと見ない間に大きくなったなァ」
「うるさい、出てけよ」
普段は家へ寄りつかない父親が、こういう時だけ顔を出すなんて最悪だ。
朔は力尽くで父親を部屋の外へ押し出す。
「なんだ、それが親に対する態度か!」
「親なら家に金入れろ!」
この家の生活費は朔の母親が、民宿で細々と稼ぎだしたものだった。けっして楽な生活じゃない。
それを思うと本当に、だめな父親の存在が腹立たしい。
父親は散々わめいて部屋を出ていく。
「ごめん、イヤなとこ見せちゃって……。ウチ今、こんなでさ……」
落ち込む気持ちのまま謝ると、彼女は朔の言葉を遮るように、はっきりと首を横にふった。
――いいよ何も言わなくて。わかってる。
彼女の視線は、部屋の隅に寄せてある本の束を見ていた。
高校二年の朔が受験に備え、夜な夜な取り組んでいる参考書だった。朔は今の生活を変えるため、大学へ進学し身を立てようとしていた。
いつも映画や音楽の話ばかりで、受験の話なんてほとんどしたことがなかったのに……。彼女は朔の思いに気づいてくれていたらしい。
胸にこみ上げてくるものがあった。
「俺、お前のこと……」
好きみたいだ――そう伝えようとしたとき。
部屋の外から、激しく言い争う声が聞こえた。
酔った父が、母とケンカをしているらしい。
「いや、こんな状況じゃあな……」
告白どころか、映画を観ることもできない。
その日は結局、映画鑑賞をあきらめ、彼女を家まで送ることになった。
それから数日後だった。朔たちの暮らす小さな町が被災したのは――。
幸い彼女とは避難先の遊園地で顔を合わせた。
遊園地のある高台で不安な夜を照らす焚き火を見つめ、どちらともなくふたりは言った。
――十年後、誰とも付き合ってなかったら付き合おう。
未来が明るいことを信じて、そう伝えるのが精一杯だった。
人生はままならないことばかりだ。先は見通せない。
でも十年……。十年あれば何か変わるだろうか。
そして約束の十年後――。
朔の暮らす民宿で、小さな宴会が開かれていた。
地元のおじさんたちと、それから地元へ戻ってきた人たちと。
その中に彼女がいた。
被災後、都会へ引っ越してしまい、もう戻ることはないと思っていた彼女が……。
愛想よくお酌をしている彼女を廊下から見て、朔の胸は高鳴る。
彼女にどう声をかけよう。
彼女は昔のように微笑んでくれるだろうか。
ふたりの物語が、また動きだす――。
キャストインタビュー
一之瀬昴さん / 恩田龍之介 役
――収録ありがとうございます。お疲れさまでした!
――一之瀬さんは『大人の夏休み』 シリーズ初参加となりますが、この企画についての印象や感想を教えていただけますでしょうか。
「夏休み」や「夏」という言葉が持つ、子供の時のワクワク感、楽しいことや心躍ることが待っていると思う感覚って、大人になるにつれて無くなってくると思うんですけど、このシリーズは全体を通して、子供の頃に抱いていたワクワク感や「何かあるかもしれない」というようなみずみずしい感じが全体的にあるなと感じました。展開的にもそんな気持ちを思い出させていただきましたし、この『大人の夏休み』シリーズにはそんなドキドキする空気感があるなと思いました。
――演じられたキャラクターの魅力をお伺いできますでしょうか。
彼は元ヤンにもかかわらず料理長の腕に惚れ込んで料理の道を究めようとしているというのが、彼自身の真っすぐさと言うか素直さを表している気がします。だからこそ彼の融通が利かないようなところも、彼の一本木で真っすぐなところ故のことだと思います。そしてそのせいでヒロインと衝突してしまうところも、彼の可愛い魅力だなと思います。
――恩田龍之介を演じるにあたって心がけた点や難しかった点、または演じやすかった側面などありますでしょうか?
彼自身竹を割ったような性格なので変な駆け引きとかも全くなかったですし、自分のお芝居する中の感情の赴くままに、彼の感情のままにやれたのはすごく演じやすく、面白かったなとも思いますね。
――今回の収録で印象に残ったシーンや台詞はありましたでしょうか? また、聞きどころをぜひご紹介してください!
シチュエーションボイスなので基本的に全編を通して彼とヒロインの関係性にクローズアップされることが多いですが、彼自身を縛っている料理長への恩であるとか、旦那様に対して「間違ったことをしたくない」という想いがあるからヒロインと衝突する、といったシーンが随所にちりばめられています。彼が他の人とどういう風に関わっているのかがなんとなく想像できるシーンや彼自身の言葉から伝わってくるシーンを探して、彼の声色や心の変化も楽しんでいただけたら、彼をより多面的に見つめられるんじゃないかなと思います。
――本シリーズは田舎町を舞台にしておりますが、田舎にまつわる思い出がありましたら教えてください!
田舎は、夏休みとかにおじいちゃん・おばあちゃんの家に帰省した、というようなことが多いでしょうから、田舎にまつわる思い出と言われると「夏」「川遊び」「虫取り」といった印象ですね。
――龍之介とヒロインの二人へ向けて、何か言葉をかけていただけますでしょうか!
龍之介はかなり真っすぐなやつで融通が利かないところがかなりあると思うので、ヒロインもこれから過ごしていくにあたって「こういうところが龍之介君っぽくていいな」と思うところもあれば、逆に「だから嫌なんだよ」と思うこともあると思います。しかしお互い、最初に思った相手の良いところや好きなところを忘れる事なく、これからも互いを大切にし続けていってほしいなと思います。
――最後に、CDの発売を楽しみにしているファンへのメッセージをお願いします!
夏が来ると無条件に開放的になったり、気分がワクワクしたりということが皆さんあると思うんですけど、この『大人の夏休み』シリーズは、そんなワクワク感や「何かが起こるかもしれない、楽しいことがあるかもしれない」という気持ちの具現化のような作品ではないかと思っています。ぜひこの作品を聴いて楽しんでいただいて、ご自分の日常生活や夏休みを楽しさ溢れるものにしていただければと思いました。ヒロインは都会にいたままじゃ龍之介との再会も無かったわけですし、やっぱり一歩を踏み出すことによって龍之介とこういう関係性になっているわけなので、皆さんもこの作品をきっかけに、ちょっと海に行ってみようとか、山に行ってみようみたいなことを、夏に何かひとつチャレンジできる元になってくれればいいなと思います。
冬ノ熊肉さん / 町宮朔 役
――収録ありがとうございます。お疲れさまでした!
――冬ノ熊肉さんは『大人の夏休み』 シリーズ皆勤賞ですが、第4弾の印象や感想を教えていただけますでしょうか。
気がつけば前の3作とも違った役をやらせていただきまして、こうやって全シリーズ呼んでいただけるのもありがたい限りです。今までと一番違ったなと思うのが、ヒロインが田舎に帰ってくる理由が、都会に疲れてとか、ちょっと心が苦しくて、ではなく、ある種【彼を救う】ために帰って来てくれたというところです。ベースの導線になる部分がいつもよりも癒し寄り、重たい・ヘビーな作品になっていた印象ですね。
――演じられたキャラクターの魅力をお伺いできますでしょうか。
朔は見る場所によって印象がすごい変わる人間だなと思っています。ヒロインは朔と先輩後輩の関係で学生時代を一緒に過ごしていて、彼が良い素敵な人間だから、久しぶりに会ってもラフに接することが出来る人ですし、民宿という場所にいるおじさんやお客さんたちにとっては気安いお兄ちゃんっていう面もありますよね。
しかし、彼が抱えている仕事では、どうしてもにじみ出てくる雰囲気があると思うので、彼の素を知らない・彼の家のことを知らない人からすると、とんでもなく怖さも感じるだろうし、得体の知れない人に感じると思います。
彼のバックボーンや彼がどういう生き方をしていたのかなど、朔の人生のどこと接しているのかで見え方が全然違います。そこが彼の魅力です。
――町宮朔を演じるにあたって心がけた点や難しかった点、または演じやすかった側面などありますでしょうか?
再会した直後はあくまでラフに話す、というのは最初イメージしていました。朔の中では多分「彼女が久々に帰ってきた。会えた」っていう嬉しさもあるだろうし、民宿の町宮さんとこの“あんちゃん”ってかなり親しみやすいからこそ、子供っぽくならないようには気をつけていました。“町宮んとこのお兄ちゃん”としてご近所との繋がりも強いでしょうから、気やすい兄ちゃんだけど、色んな経験をしているからこその大人な感じは出るように心がけました。逆に、彼が後半いろんな感情や状況を吐露していくシーンは難しいところでしたね。
――今回の収録で印象に残ったシーンや台詞はありましたでしょうか? また、聞きどころをぜひご紹介してください!
懐かしの場所で、ヒロインの言葉に最初彼は浮足立つんですけど、その後に続く言葉で、朔は自身の状況も相まってどんどん自分が問い詰められているように感じて……というところから始まるあのシーンは、今までの『大人の夏休み』シリーズに無かったなと思いました。ヒロインのしんどい・辛い・苦しいを受け止めるんじゃなくて、彼の「苦しい」がぽろぽろと零れていきながらヒロインにぶつけてしまうっていうところは、朔もしんどかっただろうなと思います。演じていてもやっぱり心がどしんと重くなりました。という点であのあたりのシーンは印象に残りましたし、ある種、町宮朔と『大人の夏休み』の重要なポイントなんじゃないかな、という風に思います。
――朔とヒロインは映画好きという共通の趣味がありますが、映画にまつわる思い出やこだわりなどありましたら教えてください!
私の地元は特に田舎というわけではなく、映画館もそれなりにはありました。しかし、学生の頃、見たいと思った映画が地元の映画館でやっていなかったので、自転車で2、3時間かけて、汗だくになりながら上映している映画館まで観に行った思い出はありますね。
――朔とヒロインの二人へ向けて、何か言葉をかけていただけますでしょうか!
言葉にするのが大切だと思います。「好き」などの相手に思ったこと、相手を想った言葉をお互いにかけあってほしいです。
――最後に、CDの発売を楽しみにしているファンへのメッセージをお願いします!
ありがたいことに、まさかまさかの『大人の夏休み』シリーズ皆勤賞というところで、自分自身もびっくりしているところがあります。今作は、これまでの3シーズンとはまた違って、お聴きの皆様もずしっと胸に来るようなところもあるんじゃないかなと思いました。その他のお三方がどういう話になるかは私も詳細を知らないんですけれども、また、1、2、3、シリーズ目とは違った、この『大人の夏休み4th』でしか聞けないエピソードやメッセージ性が色々あると思いますので、楽しんでいただければ幸いでございます。
恋津田蓮也さん / 岡崎耀司 役
Coming Soon
ドレミファソラ夫さん / 雁谷豊 役
Coming Soon
ムービー
恩田龍之介(CV.一之瀬昴)試聴ムービー
町宮朔(CV.冬ノ熊肉)試聴ムービー