恋の催眠騒ぎ第25話「今宵、荒野の教会にて」

第25話 今宵、荒野の教会にて

~前回までのあらすじ~

師匠に初々しい和菓子を食べて貰うために、

旅に出た甘味屋ご一行ですが、

おやおや、どうやら荒野のど真ん中にいるようですね。

はて、何をしにきたのでしょう?

師匠・通常

ひもじいですね、お腹が空きましたよ、紫龍

オーナー・基本

では師匠、私の和菓子を

師匠・悲しい

紫龍ひどい! しくしく

オーナー・?

どうなされたのです?

師匠・悲しい

もう二日程前から菓子ばかりではないですか。私はそろそろ塩辛い物が食べたい

オーナー・基本

とは言え師匠、私達は菓子とその材料しか持たずに旅に出たのですから仕方ありませんよ。もうすぐ目当ての教会が見える筈なので、それまで我慢してくださいね

姫・照れ

和菓子、アンジール、和菓子、アンジール、和菓子、菓子、菓子、うふふ、ふふ、し・あ・わ・せ

執事・基本

いけない、私のお嬢様が糖分の取り過ぎでそろそろ臨界点に達しようと……

師匠・きょとん

あ、あそこに見えるのは例の教会。確かワインやビール、お菓子も作っているんでしたよね。

正直に言うと今はお菓子よりもしょっぱい物が食べたいのですが贅沢は言いません……

姫・基本

お菓子の家に着いたのか!?

執事・悲しい

お嬢様、私にはもう返す言葉がございません

ドンドン

姫・笑顔

たのもー! わらわは菓子を所望じゃー!

シスター・笑顔

まぁ、こんな荒野の教会へよくいらっしゃいました。

姫・笑顔

おお、そなたこの教会の者だったのじゃな! くるしゅうない

オーナー・ニヤリ

これはこれは。幻想的なステンドグラスに差す朝日以上に美しいシスター、再会できて光栄です

師匠・怒り

……紫龍、あなたと言う人は

姫・怒り

女性と見ると声を掛けずにはおれない病気のようじゃな

執事・悲しい

まったく手遅れにてございます

姫・基本

ところでシスター。こたび、わらわ達はな……

かくかくしかじか

シスター・通常

なるほど。世界中のお菓子を完全制覇し、神聖お菓子帝国を築くために――

執事・怒り

違います!!

執事・基本

失礼しました。今のお嬢様の言葉に耳を貸さないでください

続 かくかくしかじか

シスター・通常

なるほど。では初々しい味を求めて、教会秘伝のお菓子作りを学びに来たのですね

囚人・通常

あいにくココには菓子なんか作れるよーな材料はねーぜ! 俺が全部食っちまったからな!

シスター・通常

な、ななな! 何故、あなたがいるのです! どこから入ってきたのです!?

囚人・笑顔

細かいコト気にすんなよ。耳にタコができんだろ。脱獄して来たに決まってんじゃねーか

囚人・ウインク

ま、お近づきの印にこれでもどーぞ

シスター・通常

はい、いただきます。ごくごく……って、あなたこれはお酒ではないですか!?

囚人・拗ね

ちえーッ、シスターのケチ。たまにはいいだろ、狭い独房の中じゃ塞ぎ込んでいけないよな!

シスター・怒り

あなた自分が何故収監されているのか理解しているのですか!?

囚人・通常

あー、はいはい。そうだ、あんたらもどう? 酒と一緒に飯でもさ

オーナー・?

そう言えば、本日は泊まる所もなく彷徨っていたせいで、まだ何も食べていませんでしたね

師匠・通常

はい、糖分以外は

囚人・笑顔

まぁ、俺が全部くっちまったから、ロクなモン残ってねーけどな

姫・笑顔

そうじゃ! わらわ、先に出会った奇術師に「まんかんぜんせき」とやらも出して貰ったのじゃった。冷蔵庫に入れ、執事に持たせておったのを忘れておったぞ

師匠・びっくり

なんですって!? どうして今まで忘れていたのですが

師匠・悲しい

しょっぱい物、ずっと我慢していたのに。しくしく

執事・悲しい

申し訳ありません。主はお菓子で頭がいっぱいになっていた故に

姫・笑顔

折角じゃから皆で食べようではないか。これ、執事

執事・基本

はい。ここに業務用冷蔵庫ごと。まったくお嬢様はちゃっかりしておいでになられます

どーーーん!

謎の説明人

説明しよう! 満漢全席とは古代中国ほにゃらら朝時代に始まった、100種類を越える料理を数日間に渡り振る舞う宴会様式のことである!

囚人・笑顔

うっま――――っい! いつも独房の飯だかんな。こんな豪華な飯は久々だ

シスター・怒り

まだ食事前のお祈りすらしていないと言うのに、コラ!

姫・笑顔

よいではないか、よいではないか~。うむ、中華も悪くないのう

執事・怒り

お嬢様お下品です。それは日本における悪代官とやらのセリフでございます

師匠・にっこり

まぁ、こんなに大勢で食べるご飯はいつ以来かしら。ねえ、紫龍。ふふ

オーナー・?

(師匠が心から笑っていらっしゃる!)

囚人・笑顔

ごっくごっく……。ぷはー!

姫・笑顔

おーなかなか見事な飲みっぷりじゃな

囚人・ウインク

飲み会つったら宴会芸だよな。はいはーい! 俺、脱っぎまーす!!

シスター・怒り

えぇ!? ま、待ちなさい!! こんな所で何をなさる気ですか!? いやーーー!

オーナー・?

おやこの空き瓶、アルコール度数45度とありますね

シスター・拗ね

誰かっ、彼を止めてください!

あらあら、楽しい大宴会が盛り上がりを見せてますが、

師匠と甘味屋の二人が、そっと部屋を抜け出したようですよ?

どうやら静かなテラスへと移動したみたいですが……。

師匠・にっこり

ふふふ。本当に楽しい

師匠・通常

紫龍、私あなたと今回の旅に出て良かった

オーナー・笑顔

師匠、私もです

オーナー・基本

(私は、私のお菓子を召し上がって頂くよりも、あなたの願いを叶えるよりも、その笑顔を見ていた方が、ずっと幸せですよ)

オーナー・笑顔

初々しいお菓子は結局作れていませんが、こうして師匠と共に旅を出来たことが、私には何よりです

オーナー・基本

……師匠、ご成婚のお話、やはり考え直していただく訳にはいかないのですか?

師匠・きょとん

今、何と言いましたか?

オーナー・基本

いえ、私も少々お酒が回ってきたのかもしれません

……次の日。

シスター・笑顔

では、みなさんお元気で

姫・基本

わらわ達も城へ帰るぞ。もうお菓子は充分じゃからな。行くぞ、我が執事よ

執事・悲しい

お嬢様……私、昨日の記憶が綺麗さっぱり無いのですが。う、頭が痛い

オーナー・基本

さぁ、私達も一度日本へ戻りましょうか

師匠・通常

ええ、紫龍

さて、可笑しな珍道中もここにて解散のようですね。

日本へ帰ることにした師匠と甘味屋のようですが……、

この旅の行方は、果たしてどう終わるのでしょうか?

それでは次回、

「思い出は思い出のままに」

どうか最後まで、お楽しみに!