大人のシェアハウス大人のシェアハウス

[ スペシャル ]

キャストインタビュー

  • 後藤寝床さん / 新庄蓮 役

    ――収録ありがとうございます。お疲れさまでした!

    ――今回の企画についての印象や感想を教えていただけますでしょうか。

    ルームシェアというのがとてもいいスパイスになっていますね。初めは複数人でのプレイかと思いましたが、主人公が重複しない世界線はとても安心設計です。

    ――演じられたキャラクターの魅力をお伺いできますでしょうか。

    俺様キャラでありながら、苦手な分野に果敢にトライする憎めない男、新庄蓮。俺様の俺様感が存分に俺様している点がとても魅力的な俺様です。

    ――今回の収録で印象に残ったシーンや台詞はありましたでしょうか? また、聞きどころをぜひご紹介してください!

    最後のトラックがとても印象的です。はじめからは想像できるようで想像できない、彼のいい具合の俺様ぶりを是非聴いていただきたいです。

    ――今回、ドラマの撮影中という設定でしたが、ドラマはお好きですか? 好きな場合、どのような作品やジャンルが好きですか?

    ミステリーとお色気、この相反しそうで同時に存在できるジャンルが好きです。他にもアクションとお色気や、ラブロマンスとお色気も好きですね。もしかしたらお色気が好きなのかもしれません。

    ――ルームシェア生活についてどんな印象をお持ちですか?

    エッチだなぁと、常日頃から感じています。ルームシェア、ワード自体が殊更エッチですよね。ルールが存在するのに、それを破るも何も自分の意思次第。とてもエッチです。

    ――蓮は本業モデルですが新しく俳優という仕事にチャレンジしました。後藤寝床さんは、今後新しくチャレンジしたい仕事はありますか?

    このお仕事を更に深めていきたい、そう考えております。新しくチャレンジする暇なく、喘ぎ声ひとつ、リップ音ひとつ、バリエーションを増やしていきたいです。ひょっとすると、それがGTBの新たなチャレンジと言えるかもしれません。

    ――蓮になりきってヒロインにひと言お願いします!

    特等席で俺の人生を見れるんだ、破格だろ。

    ――最後に、CDの発売を楽しみにしているファンへのメッセージをお願いします!

    ルームシェアに挑む新庄蓮に呑み込まれ、骨抜きになってください。そして、ここまでの俺様はGTB初めてもしれないです。どうぞ新たなGTBの一面も併せて知って頂けたら幸いです。これは確実にGo to bed案件だと思います。お楽しみに!

  • 冬ノ熊肉さん / 滝沢健人 役

    ――収録ありがとうございます。お疲れさまでした!

    ――今回の企画についての印象や感想を教えていただけますでしょうか。

    シェアハウスという空間だからこそ、健人とヒロインだけではなく、神楽さんや蓮さんともコミュニケーションが取れるのが魅力かなと思いました。
    その中でそれぞれ相手がいて、愛を育んでいく……ある種聞き手からするとドキドキ感もあったんですよね。健人は気にしていなかったけど「あらら、大丈夫かしら」というのはありました!

    ――演じられたキャラクターの魅力をお伺いできますでしょうか。

    すごく「The アイドル」を体現するのが上手なんだろうなと思う反面、健人自身が言っていた脇の甘いところもあるところにより彼らしさを感じられました。
    大切な人のためなら自分を変えられるし、頑張れるしというところにも好感を持てましたね。

    ――今回の収録で印象に残ったシーンや台詞はありましたでしょうか? また、聞きどころをぜひご紹介してください!

    自分からおねだりしていくところは、台本を拝見したりやらせていただいたりした中でも「おぉ、なかなか激しいねあなた」「君は乱れるね」と思いながら演じました!
    受け身になった時にああいった反応なんかも彼ならではの魅力なんだろうなと。
    そういうところがあるからこそ余計に、その後の展開で健人の芯の部分や芸能界で生きてきた中で無意識に纏っていた鎧が剥がれた姿が表現できればと思いながら演じました。

    ――今回、ドラマの撮影中という設定でしたが、ドラマはお好きですか? 好きな場合、どのような作品やジャンルが好きですか?

    最後は心温まる展開や幸せに終わるヒューマンドラマ系が好きですね。そういうのを見ると反動で、最後は後味が悪い作品も見るんですが(笑)
    ただ、三角関係が絡むようなドラマは「あぁ……」となってしまうので、あまり見られないところがありますね。

    ――ルームシェア生活についてどんな印象をお持ちですか?

    私の中でシェアハウスは、学生さんだったり夢を追いかけていたり、さあこれからだ!という人が集まるイメージがあったので、各々実績のある3人が集まって一つ屋根の下で生活を共にしたら一体どうなるんだろうなと思いました。

    ――ズバリ! 健人みたいな友達がいたらどうでしょう? 仲良くなれそうですか?

    私から見ると友達になれるんじゃないかなとも思うんですけど、健人からしたら私みたいなタイプはどうなんだろうという感じですね。
    そもそも健人がアイドルじゃない自分を見せないと思うので、あのキラキラしている健人と……仲良くしているところは想像があまりつかないですね。

    ――健人になりきってヒロインにひと言お願いします!

    カレーに納豆を入れると美味しいゾ☆

    ――最後に、CDの発売を楽しみにしているファンへのメッセージをお願いします!

    改めまして、滝沢健人の声を担当しました冬ノ熊肉です。
    私の中ではなかなか出会わないタイプの男性に出会ったなと思いながらも、自分の中にほんの少しでも眠っていればと思う可愛さ・キラキラした部分を採掘しながら絞り出して、「可愛いとは何ぞや」と思いながら演じました。
    健人自身はアイドルのプロフェッショナルではありますが、そうじゃない一面が見えた時に彼の可愛らしさ、カッコよさ、愛おしさが見えてくると思います。
    奔放なところはありますが温かい目で楽しんでいただければと思います!何卒よろしくお願いいたします!

  • 茶介さん / 神楽京介 役

    ――収録ありがとうございます。お疲れさまでした!

    ――今回の企画についての印象や感想を教えていただけますでしょうか。

    シェアハウスということだったのでもっと他のキャラとの絡みがあるのかと思っていました。難しいところですが絡みがなかった点は少し残念でした。

    ――演じられたキャラクターの魅力をお伺いできますでしょうか。

    ストイックさゆえの内にこもる部分や、自分のテリトリーに入れて良い人とそうじゃない人との差が激しい部分に彼らしさを感じました。

    ――今回の収録で印象に残ったシーンや台詞はありましたでしょうか? また、聞きどころをぜひご紹介してください!

    劇中劇というところもあって、実際に京介がどう芝居をするのかを作るのが難しかったです。

    ――今回、ドラマの撮影中という設定でしたが、ドラマはお好きですか? 好きな場合、どのような作品やジャンルが好きですか?

    あまりジャンルには拘りませんが、海外モノは観てしまいます。

    ――ルームシェア生活についてどんな印象をお持ちですか?

    若い時は面白そうと思っていましたが、パーソナルスペースが広いタイプなので無理でしょう。

    ――京介が芝居に対する姿勢などで、ご自身と共通する点や重なるような点はありましたか? なければ自分だったらこうだなー、ということをぜひ教えてください!

    自身の内面に向き合う部分は同じですが、台詞を作る時に正解を求めて自己リテイクはしませんね。

    ――京介になりきってヒロインにひと言お願いします!

    こんなコメント読んでないで、早く本編を聴いてくれ

    ――最後に、CDの発売を楽しみにしているファンへのメッセージをお願いします!

    所謂、天才と呼ばれる人間を演じるのは凡人には中々ハードルが高かったです。我々常人とは何かが違う、その「何か」が上手く伝わりましたら有り難いです。

スペシャル小説

  • 第1話

     その日、撮影スタジオの一室にドラマの撮影チームが集まっていた。

     大きな会議テーブルの中央で監督が、顔合わせの会議を進行している。

    「えー、それではお待ちかね、今回の俳優陣を紹介しよう。まずは主演のひとり、新庄蓮くん!」

     監督の視線を、新庄蓮は自信たっぷりの表情で受け止めた。モデルらしい長い手足、整った顔立ちに皆の視線が注がれる。

    「蓮くんはモデルとして有名だからみんなも知っているね? 演技は未経験ということだが、きっとこのドラマの顔として、彼らしい存在感を示してくれることだろう」

     他の役者やスタッフたちから、パラパラと拍手が起こった。

    「次はご存知、神楽京介くん!」

     神楽京介は立ってきれいにお辞儀する。眼鏡の奥の瞳が涼やかな、落ち着いた雰囲気を持つ青年だ。

    「彼と組むのももう3作目か。京介くん、今回も手堅い演技を期待しているよ」

     監督の言葉に、京介はしっかりとうなずいた。

    「そして主役の3人目。滝沢健人くん!」

     健人は「はーい!」と明るく手を挙げて立ち上がる。

    「トップアイドルの健人くんを今回、主演のひとりとして迎えることができた。ぜひドラマを盛り上げてもらいたい」

     健人は底抜けに明るい笑顔で、監督やスタッフたちに「どうも」「よろしく」と愛嬌を振りまいた。


    「新庄くん、滝沢くん。神楽です。これからよろしく」

     会議後。3人の中で最年長の京介が、他のふたりへ握手の手を差し伸べる。

    「蓮でいい」

    「ボクも健人でいいよー」

     ふたりが順に京介の手を取った。

    「3人は今回が初対面?」

     横から監督が声をかける。

    「ええ。僕は役者、蓮くんはモデルで健人くんはアイドル。それぞれ分野が違いますからね」

     答えたのは京介だった。

     蓮と健人もうなずく。

    「ドラマの中では3人は気の置けない仲だ。君たちも仲良くしてくれよ?」

    「ええ、そうします」

    「わかりました」

    「神楽さん、蓮さん、よろしくね?」

     うなずく3人を、監督が満足そうに眺めた。

    「そこでだが……」

     京介たちの前に、3本の鍵が差し出される。

    「なんですか? この鍵は」

    「ドラマの小道具?」

     京介と健人が鍵を1本ずつ手に取った。

     蓮も残りの1本に手を伸ばす。

    「……にしては新しいな。今作ってきたみたいだ」

    「その通りだよ」

     監督が胸を張った。

    「君たちの暮らすシェアハウスの鍵だ。今日の顔合わせに間に合うよう手配した」

    「シェアハウスって、作中に出てくるシェアハウスですか?」

     京介はますます首をかしげる。

     だとしたら今日の顔合わせに間に合わせる必要はない。撮影スタートまでにはまだ3週間あるからだ。

    「そう、作中に出てくるシェアハウス。そこに似た間取りの物件を手配した。君たちに住んでもらうためにね」

    「えっ……!?」

     京介は思わず声をあげる。

     この監督はドラマのリアリティを重視する人だ。前のドラマでも役柄に合わせて筋トレをするよう言われたし、その前のドラマではパティシエ役を演じるために製菓の修行をさせられた。

     けれどドラマの役柄と同様に、他の役者たちとシェアハウスに住むなんて……。

    「住むとは? 監督……」

    「ボクたち3人がシェアハウスに同居? あはは! それっておもしろーい。……って、冗談ですよね?」

     蓮と健人も、にわかには信じられないようだった。

    「私は冗談は言わないよ? 監督が冗談を言い出したら撮影が混乱する」

     監督が真顔で答える。

     続いて、シェアハウスの地図と契約書のコピーが配られた。

     ドラマの契約書の細則に、シェアハウスでの同居についての記載がある。

    「えっ、これ……ウソだろ……?」

    「ボク、こんなの聞いてなーい!」

     愕然とする蓮、そして半泣きの健人の肩を、あきらめの表情の京介が叩いた。



     そして顔合わせの翌週。番組で契約したシェアハウスに、新庄蓮がやってきた。

    「……ここか」

     車を降りていくと、庭を掃いているすらりとした後ろ姿が目に映る。

    「アンタ……」

     蓮の声に振り返ったのは若い女性だった。きっちりとしたスーツを着ている。

    「見ない顔だな。番組の関係者か?」

    「いえ、私はこのシェアハウスの管理人です。新庄さんですよね? お待ちしていました」

     彼女はここのオーナーの娘で、普段はOLをしているらしい。

     それから彼女が建物の中を案内してくれた。

    「なるほど。環境は悪くないようだが、しかし……」

     蓮はシェアハウスの2階にある、京介と健人の部屋のドアを見る。そこにはすでにドラマでの役名が書かれたプレートが掲げられていた。

    「何かありました?」

     案内をしていた彼女が蓮を振り返る。

    「いや、なんでもない」

     蓮の目下の不安は、同居人たちのことだった。ふたりともひと癖ありそうな雰囲気だし、蓮自身、誰とでも仲良くなれる性格ではない。ドラマの中ならともかく、プライベートで共演者たちとぶつからずにいられるかどうか……。


     その頃、神楽京介は、女性マネージャーの車で同じシェアハウスに向かっていた。

    「それにしても、彼らと同居することになるなんて……。君は知ってた?」

     運転席のマネージャーはわずかに首をかしげた。

    「はい。でも神楽さんが、同居の条件を理由にオファーを断ったりしないことはわかっていたので」

    「まあ、そうだね」

    「すみません」

    「いや、君の判断は正しいよ。演技に集中したいから、他のことは君に一任するって言ったのは僕だしね」

     京介は彼女の横顔を眺め、ふうっと息をついた。

     その時、車内にスマホの呼び出し音が響く。

    「はい、神楽――」

    『あっ、神楽さん!? 滝沢健人です! 神楽さん、もうシェアハウスに来てます?』

    「いや、もうすぐ着くけど……」

     わざわざ電話してくるなんて、何かあったんだろうか。

    『そっか。じゃあ今の子は神楽さんの彼女サンとかじゃないんだ……』

    「誰のこと?」

     話がさっぱりつかめない。

    『今シェアハウスに可愛い女の子が入っていって。神楽さんじゃないなら蓮さんの知り合いかなあ? よくわかんないけど、よしっ、声かけてみよ』

     電話はそれで切れてしまった。

    「なんだ? 今のは……。可愛い女の子がいるとか、声をかけてみるとか……」

     京介は運転席のマネージャーと顔を見合わせる。

     健人はきっと問題児だ。演技に集中したいのに、そんな彼と同居だなんて先が思いやられる……。


     一方の滝沢健人は、電話を切ってシェアハウスへ足を踏み入れた。

    「こんにちはー」

     さっき見た女の子が、トコトコと玄関先まで健人を迎えに来た。

    「健人さん、お疲れ様です」

    「おつかれー♪ えーと、君は?」

    「事務所のほうからお手伝いに来ました。私は……」

     彼女曰く、健人の所属事務所から、健人の身の回りの世話をするためにやってきたらしい。

    「えええ! キミ、ボクのお世話係!? 何それ、ラッキー♪」

     彼女は困惑したような目を健人に向ける。

    「男だけのシェアハウス生活だと思ってたけど、キミみたいな子がいてくれるなら悪くないかも? あ、ボクの部屋はどこ?」

    「上です。今荷ほどきをしようかと思っていて」

    「ふーん。それよりキミ、おっぱいの形きれいだね。ブラどこの?」

    「なんの話だ?」

    「あ、蓮さん!」

     階段を上がろうとしたところで、下りてきた蓮と鉢合わせる。

    「いきなり風紀を乱さないでくれよ?」

     その声は後ろから来た京介だった。

    「あはは~。キミ、おっぱいの話はまたふたりの時にね」

     健人がお手伝いの彼女に耳打ちする。

     蓮と京介は視線を交わしてため息をついた。

     人気モデルに役者にアイドル。さて、この3人のシェアハウス生活、どうなるのか……。

     そして同時に、三者三様の恋が始まろうとしていた――。


    2話につづく

  • 第2話

     同居生活が始まってしばらく。3人の都合が合う日に、シェアハウスの庭で親睦会が開かれることになった。

     その日はくしくもドラマのクランクイン当日で――。

    (ワインが美味いな。この庭の景色もいいし……)

     撮影の興奮も重なって、蓮は気持ちよくグラスを重ねていた。

    (ここへ越してきたのは案外正解だったか)

     ガーデンチェアから見上げると、夕刻に差しかかった空には朱色や薄紫色の雲がたなびいている。それがグラスで揺れる赤ワインの色にもよく合っていた。

    「……なあ、そっちにもう1本、ボルドーの赤があったよな?」

     蓮はゆっくりと飲み干してから、リビングのほうを振り向く。

    「え、蓮さんもうそれ空けちゃったんですか? 酒豪だなー」

     隣でつまみのオリーブの実をつついていた健人が茶化した。

    「もしかして2本目? 僕はまだ一杯目にも口をつけていないのに」

     乾杯早々急ぎの電話で外していた京介が、蓮たちのいる庭へ下りてくる。

    「あっ、神楽さんおかえりー! 蓮さんは始まる前から飲んでたからー」

    「今日は飲むために集まったんだろ? 飲まなくてどうする」

     蓮は悪びれることもなく、空いたグラスを挙げてみせた。

     座り直しながら京介が言う。

    「でも親睦会だろう? ひとりで飲むんじゃあまり意味がない」

    「あはは! 神楽さん、それ言えてる!」

     京介の言葉に健人が乗っかった。

    「だったら健人ももっと飲め! 京介さんも!」

     蓮が立ち上がりかけたところでシェアハウスのオーナーの娘が、リビングから赤ワインのボトルを持ってくる。もう片方の手には新しいグラスも握られていた。

    「これを飲むなら、グラスもボルドーグラスがいいですよね?」

     大きく丸みのあるボルドーグラスが差しだされる。

    「サンキュー、アンタ気が利くな」

     蓮は機嫌良く受け取った。

    「向こうに白も冷えてますよ」

    「そうか、けどそっちは日が落ちてからの方がいい」

     そこで健人が口を挟む。

    「なんで? この蒸し鶏には白ワインの方が合うと思うけど」

    「新庄さんは空を肴に飲んでるんですよね?」

     オーナーの娘が小さく笑って空いたグラスを引き取った。

    「よくわかったな」

    「それは、新庄さんがさっきから空を見ていたから……」

     見られていたのに驚いた。それでいて、アピールしてこない彼女に好感を抱く。

    「赤ワインの色は夕陽の色に、白ワインは月の輝く夜空に合う」

    「何ふたりだけで通じ合ってるのー?」

     視線を交わすふたりを見比べ、健人がすねた顔をしてみせた。

    「空を肴に、か。蓮は意外に詩人だな。あ、僕もその赤味見させてもらっていいだろうか?」

     京介が、ナプキンの上に伏せられた予備のグラスを持ち上げる。

     けれども蓮の視線は、すでに空の景色に向けられてはいなかった。視線の先にあるのは、京介のグラスにワインを注ぐ彼女の姿だ。

    「いや、空もいいが、この庭の景色も悪くない」

     蓮はつぶやく。

    「彼女がいつも、庭の手入れをしているからね」

     京介が同調した。

    「そうだな」

     同意しかけて、蓮ははたと気づく。

    (いや、違うな……)

     彼が言っているのは、単に庭の手入れが行き届いているということだ。が、蓮の気に入っている庭の景色には、彼女の姿が含まれる。

     それに気づいた時、蓮は彼女から目が離せなくなっていた。

    「なあ、酌はいいからアンタも飲めよ」

     目が離せないまま、視線の先にいる彼女に話しかける。

    「買い物やら料理やらで、アンタずっと立ちっ放しだっただろ?」

    「もしかして、買い物から料理まで全部やってもらったのか? 彼女はここのオーナーで、従業員じゃないんだぞ?」

     京介が目を丸くした。

    「正確にはオーナーの娘、だったよな? 料理は俺も手伝った」

     蓮はガーデンチェアから手を伸ばし、彼女の腰を抱き寄せる。

    「へえ、蓮の料理はどれ?」

     京介の視線がテーブルの上の皿に向けられた。

    「全部だ」

    「全部?」

    「蓮さんが?」

     健人まで目を丸くする。

    「俺がしたのは味見だけだが」

     胸を張って言うと、蓮のひざの上で彼女がクスクスと笑いだした。

    「……なんでアンタが笑う?」

    「だって……!」

     彼女の体から伝わってくる、笑いの振動が心地いい。

    「味見するかしないかで、料理のクオリティは格段に違ってくるって言うぞ? 味見は重要だ」

    「本当ですね」

     彼女はまだ笑っている。

    「笑いすぎだ!」

     蓮もつられて笑いながら、彼女の首の後ろへキスを落とした。

     この触れ合いは、酔った勢いということになるんだろうか? 蓮自身にもわからない。

     まあ、この際どっちでもいい――。



    「蓮さんと彼女、いいカンジですよねえ」

     日が落ち、蓮が彼女と白ワインを取りに行ったところで、健人はその話題を京介に振った。

    「あれ、本気だと思います? それとも単なる遊びかな?」

    「……んっ?」

     直前までマネージャーと話をしていた京介は、少し驚いたように健人を見る。

    「遊びって……。いや、さすがにそれはないんじゃないのか?」

    「どうしてそう思うの?」

     健人はテーブル越しに顔を寄せた。

     京介が声をひそめる。

    「ここは番組で借りている物件で、つまりクライアントとも繋がっている。何かあったら仕事に差し障るかもしれないだろう。あいつがそんな脇の甘いことをするか?」

    「ええっ、そんな、神楽さんってばまっじめぇ!」

     健人が茶化した。

    「真面目というか……」

     逆に健人が不真面目なんだろう、京介はそう言いたげな顔だ。

     健人は続ける。

    「じゃあさ、神楽さんは仕事関係の女の子には手を出さないわけ?」

    「仕事関係……?」

    「うん、例えばあの人。神楽さんの美人マネージャー♪ 彼女、バリキャリってカンジでカッコいいよねえ」

     マネージャーを目で示す健人を見て、京介の表情が固まった。

    (ははーん。神楽さん、マネージャーさんのこと好きなんだ?)

     健人は心の中でほくそ笑む。

    「彼女は仕事上のパートナーだ。それ以上でもそれ以下でもない」

     京介はリビングにいるマネージャーを気にしている様子だ。

    「だったらボクが口説いてもいいのかなあ?」

    「それは困る。僕のマネージャーだ」

    (おっ? これはもしかしてマジなやつ?)

     キッパリ言い切る京介を見て、健人は驚きつつも口元を緩めた。

    「何が言いたい」

     京介がムッとした顔になる。

    「ううん、なんでもなーい♪」

     健人は笑ってごまかした。

     このシェアハウスで、いくつかの小さな恋の種が芽吹こうとしている。

    (男3人のシェアハウス生活なんてきっと退屈だと思ったけど……。ふふ、案外退屈しなさそうだな)

     そんなことを考えながら、健人は自分のグラスを持ち上げた――。


    3話につづく

  • 第3話

     それから少しして、健人のお世話係が近所の洋菓子店からデザートを調達してきた。

    「うわあ、パルミジャーノのチーズタルトだ! ボクの大好物♪」

     切り分けられたタルトを見て、健人が目を輝かす。

    「これを選ぶなんてキミ、センスがいいよね?」

     取り皿を数えながら彼女が言う。

    「健人さんがこの前、これが美味しいって教えてくれたじゃないですか」

    「そっかそっかー、ボクのためにね。ボクはキミに愛されてるんだ」

    「それは実質、健人が要求したんじゃないのか?」

     ふたりのやりとりを見て、京介が笑った。

    「でもま、チーズタルトならワインにも合いそうだ」

     蓮がワイングラスを手放さすに言う。もうテーブルにはコーヒーが並んでいるが、彼はまだワインのほうがいいみたいだ。

     庭のガーデンテーブルを、ランタンの優しい光と月明かりが照らしている。

    「ボク、別に要求なんてしてないし。ねーキミ♪」

    「はい」

    「あ、ボクそっちのがいいな」

     健人がチーズタルトの一切れを指さした。

    「え、どれですか? どれも同じ大きさに切ったつもりですけど……」

    「焦げ目のとこがいいんだよ」

    「わかりました」

    「ありがと。みんなにそれ配ったら、キミはボクの隣に来てね? チーズタルト、キミと一緒に食べたいから」

     健人の過剰な要求に、彼女は戸惑いの表情を浮かべながらもうなずく。

    「健人のお世話係も大変だな」

     見ていた蓮があきれ顔で言った。

    「そんなことないでしょ。ボクは彼女に優しいよ? 何もムリなことは言ってないし」

    「だとしても、あれこれ要求が多そうだ」

    「オーナーの娘さんに手料理を作らせた蓮が言えることかな?」

     京介が横から口を挟んだ。

     それからみんなでテーブルを囲み、親睦会は和やかに進んでいく。

    (それにしても、“ボクのお世話係も大変”か……)

     チーズタルトを口に運びながら、健人は心の中でつぶやいた。確かに健人には、彼女に甘えている自覚があった。

     女性に甘えるのは得意だ。まず周囲が健人の世話を焼きたがるし、健人自身も構われることが好きだから、そんな関係が自然と身に付いている。

     けれど、彼女はどう思っているのか。

     アイドルとしての健人に心酔しているふうでもないし、虎視眈々と芸能人の彼女の座を狙う感じの子でもなかった。

     あれこれワガママは聞いてくれるけれど、彼女にとってそれはあくまで“仕事”としてなのかもしれない。

     そう思うと、健人の胸にはモヤモヤとした感情が湧いてくるのだった。


    「チーズタルト、美味しかった」

     親睦会のあと、庭のテーブルの後片付けをしていた彼女に話しかける。

     他のメンバーは中へ食器を運んでいってしまって、庭に出ているのは彼女と健人だけだった。

    「ところでキミは、どうしてボクのお世話係を引き受けたの?」

    「……え?」

     突然の質問に、彼女はテーブルを拭く手を止める。

    「男ばっかりのシェアハウスに来るのは不安じゃなかった?」

    「いえ、それは……」

     答えにくい質問だっただろう。それで健人は聞き方を変えた。

    「それともキミは、ボクのお目付役?」

     健人としては、そっちのほうがしっくりくる。健人が女性関係でトラブルを起こさないよう、事務所はあえて女性をそばにつけたのかもしれない。

     そうすれば健人がシェアハウスに女性を入り浸らせるようなことはないだろうし、彼女自身は事務所側の人間だから、ふたりの間に何かあっても表だってのトラブルにはならないということだ。

     彼女は何か考えるようにうつむき、それから顔を上げて健人の視線を受け止めた。

    「日々の仕事内容は事務所に報告しています。でも私はあくまで健人さんのお世話係です。健人さんをしっかりサポートするのが役目だと思ってます」

    「だったらキミはボクの味方なの?」

    「もちろんです」

    「何かあってもボクを支えてくれる?」

    「え……何か、とは?」

     彼女はきょとんとしている。

    「あれ、キミ聞いてないの? ボクの女癖が悪いとか。たまに言われるんだよね」

    「そんな……」

     きれいな瞳が、じっと健人を見つめていた。

    「あはは……。参ったな」

     彼女は本当に、純粋な気持ちで健人をサポートしようとしているらしい。

    「そういうの逆に困るんだよねー。本気で口説きたくなっちゃうよ!」

     冗談めかして言うものの、健人の胸の鼓動はざわざわと波打っていた。

    「ねえ、キミはどこまでボクの言うこと聞いてくれるの?」

     暗い庭先で、立ち尽くしている彼女の背中に触れる。

    「ボクのものになってって言ったら?」

    「え……?」

    「それはムリ? じゃあ、ボクの前で裸になってって言ったら?」

     言いながら健人は彼女のエプロンのひもを、するりと解いてしまった。

    「……っ、健人さん……」

    「あれ、逃げないんだ。いいのかな? ボク、調子に乗っちゃうよ?」

     耳元でささやく。

     すると彼女の耳のふちが、月明かりでもわかるくらいにみるみる赤く染まった。

    「あー、いい反応♪ 可愛いな。キスしたくなっちゃう」

     赤くなった耳のふちを、唇でなぞる。

    「早く止めなきゃ、ボクはキミにもっとエッチなことしちゃうかも?」

    「け、健人さん……」

     彼女が肩越しに健人のほうを振り向いて、唇同士が触れ合いそうになった。

     その瞬間――。

    「おい、健人」

     庭へ下りてきた京介が、とがめるように名前を呼ぶ。



     京介は心の中で深いため息をつく。

     京介の目には、健人が庭先でお世話係の彼女を困らせているようにしか見えなかった。そしてそれはおおかたその通りなんだろう。

     お手伝いの彼女がさっと健人から距離を取り、エプロンのひもを直す。

    「あーあ、いいところだったのに」

     振り向いた健人がぺろりと舌を出してみせた。

     そんな健人の態度に京介はいらだちを覚える。

    「はあ? いいところって……お前なあ! ここは共同生活の場だぞ? 風紀を乱すようなことはするな!」

    「風紀? ははっ。やめてよそういうの、コーコーセーじゃないんだから」

    「大人なら尚更ちゃんとしろ」

     こんな彼になんと言えば響くのか……。京介は頭を悩ませた。

     健人は天然なのかわざとなのか、ヘラヘラした態度をくずさない。

    「ねえ、大人は女の子を口説いちゃいけないの? 神楽さんだって、マネージャーさんとイチャイチャしてるくせに」

    「イチャイチャって……。あのな、俺たちは仕事の話しか――」

     そこで後ろから声が飛んできた。

    「ちょっと、こんなところでケンカしないでください!」

     ちょうど今話題になっていたマネージャーだった。

    「え、いや、これはケンカじゃなくて……」

     京介としては他でもないマネージャーから、健人と同列に扱われるのは心外だ。

     そんな京介の心境に気づいているのか、健人はおかしそうに笑っていた。

    「あはは! 怒られちゃったね、神楽さん」

    「……………………」

     本当に、この不良少年、もとい不良アイドルをどうしたものか。

     京介は頭を悩ませたまま、一旦彼に背を向けた。

    「後片付けがまだだったな。中へ行こう……」

     マネージャーに言う。

     ともかく今は庭先で言い合うべきじゃない。そう判断した京介だった――。


    4話につづく

  • 第4話

    「あれ、ふたりは?」

     京介が庭からリビングへ引き上げると、そこにはもう蓮もオーナーの娘もいなかった。

     マネージャーが言う。

    「もう遅いので、彼女には帰ってもらいました。新庄さんはたぶんお部屋でしょう。さっきまでソファでぐったりしていたので」

    「なるほど……」

     その光景が、京介の脳裏にありありと浮かんだ。

    「さすが王様だ」

    「え……?」

    「蓮のことだよ。彼、王様みたいだと思わなかった? 前からそんな感じはしてたけど……今日なんかほら、ワイングラス片手に脚組んで、物を取るのにも周りを使って」

     きょとんとするマネージャーに、京介は小声で説明した。

     すると彼女は小刻みに肩を揺らす。

    「言い得て妙ですね」

     京介は苦笑いで続ける。

    「親睦会のおかげでわかったよ。蓮は自信家で自分中心。健人はあのルックスと、軽薄な明るさが取り柄といえば取り柄か……。共通の欠点はどっちも女好き」

     同居人たちと同じテーブルを囲むことで、いろいろと見えてきた。それこそいいところも悪いところも。

     もちろん数時間一緒に過ごしたからといって、すべてがわかるわけじゃない。まだまだ知らない面があるだろうし、これからきっと予想しなかったトラブルも起こるだろう。

    「君はどう思う?」

     食器を片付けるマネージャーに聞くと、彼女は小さく笑って答えた。

    「きっと素敵なドラマになると思います」

    「……え?」

    「みなさん、とても個性的な方なので」

    「ああ、まあ。確かに」

     付き合うとなると難しい点もあるけれど、タレントとして強い個性は魅力だ。

     それが生きてくれば、きっとドラマも輝きを増すだろうが……。

    「ご不満なんですね? 神楽さんは」

     マネージャーが小首をかしげた。

    「そうは言ってない。けど正直、この環境で役作りに集中できるかっていったら厳しいな。今回、僕は主演の中で唯一のベテランだ。初心者のふたりを引っ張る演技をしなきゃいけないのに……」

     京介はあせりを覚えていた。役者として“芝居命”の京介にとって、ドラマの仕事はワンシーンワンシーンが真剣勝負だ。本音を言ってしまえば、周囲のことに煩わされたくない。

    「これからですよ」

     マネージャーが穏やかな口調で言った。まるで担当俳優のあせりを見透かしているかのように。

    「そうだね。まだ始まったばかりだ。撮影も、ここでの生活も……」

     あせりは禁物だ。京介は自分に言い聞かせ、テーブルに散らばったカトラリーに手を伸ばした。

     そんな時、同じものを取ろうとしていたマネージャーと、テーブルの上で手と手がぶつかる。

    「……ああ、悪い」

    「いえ……」

     突然の触れ合いに、ふたりは同時に固まった。

    (何を動揺してるんだ、俺は……)

     京介は自分をいさめ、マネージャーのほうへ意識を向けた。

     すると彼女の指先から伝わってくる冷気に気づく。

    「君の手、ずいぶん冷えているね」

     触っていいのか迷ったが、もう一度彼女の手に触れてみた。まるで氷のような手だ。

    「可哀想に……」

     しっかり者の彼女がこんな手をしているなんて。そう思うと愛しさがこみ上げる。

     京介は彼女の細い指に自らの指を絡めた。

    「さっきまで洗い物をしていたので、それで冷えただけだと思います」

     彼女は恥ずかしそうに下を向く。けれど握られた手を引っ込めようとはしなかった。

    (僕に触られるのはイヤじゃないんだ?)

     下心があって手を握っているわけでもないのに、意識すると、にわかに胸の鼓動が騒いでしまう。

     けれども京介は顔に出さずに続けた。

    「それでも冷えはよくないな。君ばかりに負担をかけてないか? 本来、このシェアハウスでの生活はプライベートなのに」

    「そうは言っても、みなさんにとってはお仕事のうちでしょう?」

    「まあ、そうだね。だから僕はここにいる」

     だったら彼女とのこの時間も“仕事のうち”なんだろうか? そういうふうには割り切れない。

    (いや、これはプライベートだ。プライベートなら多少踏み込んでもいいはずだ)

     そう思い定めた。そして……。

    「なあ、君は……」

     言いかけた時、誰かが階段を下りてくる足音が響く。

     蓮だった。

    「水……」

    「え……?」

    「水をくれ」

     蓮は王様よろしくふたりに向かって手を伸ばす。

     マネージャーの手が京介の手を擦りぬけ、彼女はキッチンのほうへ向かっていってしまった。

    (……え、今のタイミングでそれはないだろう……)

     京介は愕然とする。

    「ちょ、蓮さん! 何やってるの。今いいところだったのに!」

     健人が、庭から続くサッシを開いて苦情を言った。

    「いいところって、お前見てたのか……」

     京介は健人を振り返る。

    「それは見るでしょ。神楽さんのラブシーンなんて激レアじゃん♪」

    「ラブシーンじゃない」

    「うそだー、手ぇ握ってたの見たもんね!」

    「握ってない! たまたま手がぶつかっただけだ!」

    「やめろ!! 頭痛がする……」

     マネージャーから水を受け取った蓮が、言い合うふたりを一喝した。

    「えーっ、それ蓮さん飲み過ぎでしょ」

    「飲み過ぎだな」

     初めて健人と京介の意見が一致した。

    「うるさい」

     蓮はこめかみを押さえながらグラスの水をあおっている。人のマネージャーを使っておいて、ありがとうのひと言もないようだ。さすがだ。

    「やっぱりムリじゃないか? このシェアハウス生活……」

     マネージャーと目が合い、京介がこぼす。

    「ムリだろうな。健人は小犬みたいに騒がしいし、京介さんはヘンクツだ」

     蓮がそう応じた。

    「ヘンクツ? ヘンクツって……」

     自分より明らかに問題児の蓮から非難されるなんて、京介としてはすんなり納得できることじゃない。

    「気難しいってことでしょ」

     庭から上がってきた健人が、ヘラヘラ笑いながら京介の肩をたたいた。

     京介は舌打ちをする。

    「なるほど……。君も僕をそんなふうに思っているわけか」

    「あははっ。なんたって神楽さんはここの風紀委員長だもんね。お手柔らかに頼みますよ? イインチョー」

    (ええ……どうなる? このシェアハウス生活!?)

     悪い予感しかしない。連続ドラマの撮影終了まで耐えられるのか。

     それとも監督の思惑通り、3人の間に友情が芽生えることもあるんだろうか?

     夜のリビングには頭痛に耐える蓮のうめき声と、健人のバカみたいな笑い声が響いている。そんなふたりの間で京介は頭を抱えた――。