第3話 お嬢様、日本へ
~前回までのあらすじ~
本日のお嬢様と執事は、日本観光の真っ最中です。
甘味屋の忘れた携帯を届けにとは言うものの、ずいぶん楽しそう。
お嬢様あれは、金閣寺でございますよ。
ほう。何だか立派な建造物じゃの。あんな目に痛いもの初めて見たわ。
お嬢様……しかし、社会のお勉強でお教えしたではありませんか。
うっ……わ、わらわはそのような話、聞いておらんぞ!
いいえ。確かに致しました。また目を開けて眠っておられたのですか……?
だ、だからわらわは聞いておらん! 執事の思い過ごしじゃ!
目を開けて眠る技など習得する必要はございませんよ……どうしてそのように不思議なことばかりなさるのですか。ああでも……何故そんな可愛らしい技ばかりで私を魅了なさるのでしょうっ!
ぎゅうっ
く、苦しいぞ! 訳が分からん!! どこが可愛いのじゃ!
お嬢様は何をなさっても可愛らしいのですよ。その存在自体が罪でございます……。
も、もう良い! 次に行くぞっ!!
はい。かしこまりました。では、しっかりと私におつかまりください。
分かった。
がしっ
…………。
………?
…………。
どうした? 早くいかんか!
お、お嬢様……窒息してしまいそうです。
なっ……! 執事がしっかり掴まれと言うからではないか!
それほどまでに私のことを思ってくださってるとは……。
ええい! うるさい! さっさと行かぬともっとしがみつくぞ。
本望でございます……。
ぱっ
ラチがあかん。わらわは一人でいくぞ。
お嬢様! その足でどうやって行かれるというのですか。
……飛んでいく。
そんな。危のうございます! 今すぐにお連れ致しますので!
……さっさとせい。
はい。
ぎゅいーん!!!
わわわわわわ。
さ。着きましたよ、お嬢様。
しかしこの瞬間移動の術は何なのじゃ。
さあ。何でございましょうね。
笑顔じゃ答えにならんわ!
お嬢様。これは奈良の大仏でございますよ。これも! 社会のお勉強でいたしましたよね?
こんなアホみたいにでかい男、わらわは知らん。
そんな……とにかく、せっかくですので拝んで行きましょう。
何を拝むんじゃ?
ブツブツブツブツ……。
お、おいっ! 執事! 何を拝むのかと聞いておる!!
ん? さあ、次にまいりましょう、お嬢様。
わらわはまだ何も拝んでおらんが……。
次は……。
ぎゅいーん!!!
め、目が回る……。
お嬢様。富士山でございます。
ほう。これがフジサンか。えらく高い山じゃ。絶景、絶景。
富士山のお勉強はしてくださっていたのですね。嬉しゅうございます。
いや、テレビで見た。
テレビでございますか!? またそのような俗悪なものを……。
アレはけっこう面白いぞ。今度執事も一緒に見ようではないか。
! お嬢様と一緒にですか? ……せがまれるのなら仕方がありません……。
ん? せがんではおらんが。もう飽きた。次に行くぞ。
はい、お嬢様。仰せのままに。
ぎゅいーん!!!
今度は東京タワーでございます。
人が豆粒じゃ。こんな高いタワー、誰が作ったのじゃ?
え? そ、それは……技術のあるお方でしょう。
……知らんのか。頼りにならん奴じゃ。
い、いいえ! 存じ上げております! 確か……確か……。
執事。
は、はい。何でございましょう?
おやつはまだか?
おやつ、でございますか?
腹が減った。わらわは甘いものが食べたいぞ。甘味屋のところへ行くのではなかったのか?
そうでございますね……。本当はお嬢様をお連れしたくはないのですが。
早くせんか。喉も渇いたぞ。
いたしかたありません。参りましょう。
ぎゅいーん!!!
ガラガラガラ
おい! 甘味屋!
おや……?
甘味屋は、お嬢様と執事の急な来訪に驚いたようですね。
さて、次回は第四話。
この三人のことです。
「携帯どうぞ」「どうも、さようなら」にはならないでしょうね。
次回の甘味屋での騒動も、ぜひお見逃しなく!!
おい執事。あれは何じゃ?