恋の催眠騒ぎ第12話「舞踏会へようこそ」

お久しぶりです。本日はお招きに預かり、光栄にございます。

む……何じゃ、公爵夫人か……。

お嬢様、またそのような口の利き方をされて……。いけませんよ。いつも、礼儀正しく、と何度も注意しているでは――。

執事さん。私は、良いのですよ。

しかし……。お嬢様、ほら、いつものように可愛らしい顔をなさってください。

嫌じゃ。別にわらわが招待したわけでもないしな。

お嬢様！　ああ、いつもの素直で可愛いお嬢様は一体どこに……。

ほほっ……。お嬢様は、素敵な執事さんをお持ちで良いですね。うらやましい限りですわ。

むむ……そんなにうちの執事は良いのか？

ええ。一度、私の元へも来ていただきたいくらい。

なっ！？

……大変ありがたいお言葉ではありますが、私はお嬢様に忠誠を誓った身。もう他の方の元へなど行けません！

そ、そうじゃ！　絶対にやらんからなっ！

おーっほっほっほ。冗談ですわよ。お２人の仲が引き裂けない事は、よく知っておりますわ。

そんなの当たり前じゃ！

っ！

お嬢様……。私は、もう……感極まって……。そんなに私のことを、大事に思ってくださっていたのですね。

ふふっ……お２人とも、本当、お話していると楽しいですわ。でも……、今日は実はもっと楽しい事が……。

レディースアンドジェントルマン！　さて今宵も、素敵なショーの始まり、始まり～。

あ、あやつはっ！？

あら？　お嬢様、彼をご存知なのですか？

知っているも何も……、先日はあの方のおかげで大変な目に……。

大変な……？　ふふっ。そうなのですか？　一体、どんな楽しい事をされたのでしょうねえ。

うむ。あれは美味じゃった！

美味？　美味しいお茶会にでも、招かれましたか？

な、何故それを！？

ふふっ……。

おおおおっ！

お、お嬢様！？　どうされたのですか！？？

何じゃ、この花吹雪は！　城中に待っておるぞ！　絶景じゃ！！

確かに……美しいですねえ。

甘味屋！　いつの間に……。

本日は、宴用の甘味をお持ちしたのですよ。お嬢様、お一つどうぞ。それから、そちらのお美しいご夫人様も。

おお、美味そうじゃ。

あら、ありがとうございます。……ん、美味しい。甘味屋さんですか？　今度、お邪魔してみようかしら。

それはそれは。こんなお美しい方が来ていただけるのであれば、私もこのように嬉しい事はございません。

まあ、お上手なのね。

……これはもしや、似た者同士なのでは……。

おおっ！　今度は、ウサギが飛び出したぞ！　ほら、皆、見てみぬか！　帽子の中からウサギじゃっ！

そうですね。あの方は、本当にマジシャンだったのですねえ……。

甘味屋。感心している場合ではないでしょう。前回の森の中での出来事も気になりますし。

彼は、不思議な事を巻き起こす天才ですわ。

おや。あの手品師をご存知なのですか？

知っているも何も……ふふっ……。

…………。（ジロリ）

怪しいなどと、そんな事はありませんわ。彼は、人々を喜ばせ、楽しませるために生まれた男……。

公爵夫人の顔が……。

ええ、お顔が……。

うっとりされて、更にお美しい……。

あっ。それより、貴方も、彼の事がお気に召したのですか？

……う、うむ。あやつのすることは面白いぞ！　おやつも美味いしな。

お嬢様っ！　あのように、明らかに怪しげな、素顔も見せぬような男を……！

また、その怪しい部分が女性にとっては魅力的なのかも知れませんよ。ですよね？　ご夫人。

そうですわね。けれど貴方も、十分に妖しく魅力的ですわよ。

そうですか……ありがとうございます。では今晩は……。

あら……ふふふ……。どうやって楽しませていただけるのかしら。私は、生半可な事では満足いたしませんわよ。

こ、公爵夫人に、甘味屋っ！　またそのように、いかがわしい……っ！

そうです。お嬢様の前で、いい加減になさってください。

そうですか？　では、この続きは後ほど、ということで……。まずは、先日の怪しげな男を見つけた報告をしておきましょうか。

報告？

……もしもし。シスターですか？　本日、面白いものを発見しましたよ。こちらにいらっしゃいませんか？

シスター……？

先日、お茶会を開いてくれたあの、仮面の男。……ええ、そうです。もちろんいつもの彼も一緒で構いませんよ。では……。

な、何じゃ、甘味屋！　いつの間に、シスターとそのような仲になったんじゃ！？

そのような？　そのようなとは、どのようなでしょう……？

そ、それはじゃな……。

しかし、いつの間に、電話番号まで入手していたのですか。

さて。いつでしょうね。