第36話「やらない修繕、できない修繕」

第36話 やらない修繕、できない修繕

営業マンの見事な修繕の腕を披露してもらった一行。

再び骨董品店の中を見学していますが、

お嬢様はなにやらたくらんでいる顔をしていますよ?

営業マン・基本

ここは最初に案内しましたね。古代中国の王様が、当時もっとも腕のいい芸術家に作らせた壺です

OL・笑顔

これ、学生のころ教科書に載ってたのを覚えてます。初めて見たときはおどろきました

オーナー・基本

その壺のとなりにある皿は?

営業マン・基本

いまいち売れなかった陶芸家の作品で、イチキュッパです

執事・悲しい

世界的に貴重な壺のとなりにイチキュッパ……本当にカオスな空間ですね

OL・基本

骨董品って、素人にはよく分かりませんからね

オーナー・笑顔

しかし、皿の模様はキレイですね。夏の新作和菓子を飾るのにちょうどいいかも

姫・基本

……骨董屋よ。ちょっと、その壺をわらわに貸してはくれんか?

営業マン・思案

手にとるのは構いませんが、落とさないでくださいね

執事・基本

お嬢様、少し大きい壺ですから、お気をつけ下さいね(ハラハラ

姫・笑顔

大丈夫、大丈夫。いや、父上が好きそうだと思ってな

執事・笑顔

確かに、旦那様も骨董がお好きですからね

執事・笑顔

旦那様にお土産を、なんて、なんと心優しいお嬢様……!

姫・笑顔

あーっ! 手が滑ったー!

ガシャーン!

執事・悲しい

あーっ!

オーナー・基本

壺が……

OL・悲しみ

粉々に……

営業マン・あきれ

だから言ったのに

姫・笑顔

すまんすまん。思ったより重かった

オーナー・基本

(じーっ……)

執事・基本

(じーっ……)

営業マン・あきれ

(じーっ……)

姫・怒り

な、なんじゃ、その疑うような目は

執事・悲しい

お嬢様、今、わざと手を……

姫・怒り

ひ、人聞きの悪いことを言うでない! いくら修繕がもう一回見たくても、わざと壊すようなことは……

営業マン・あきれ

言っておきますけど、これは修繕できませんよ

姫・基本

えっ? できないのか?

営業マン・基本

当たり前でしょう。甘味屋さんが持ってきた、半分になった皿も直せないのに、粉々になった壺が直せるわけがない

営業マン・基本

そもそも、陶磁器は直すのが難しいんです。私みたいな素人では、せめて小さく欠けたのが精一杯ですよ

姫・照れ

……壺を修繕するのがそんなに難しいとは思わなんだ

執事・悲しい

お嬢様、やっぱりわざと……

姫・怒り

違う違う! 本当に手が滑っただけじゃ!

OL・照れ

とにかく、破片でケガするといけないから、片付けましょう

骨董屋店主

おーい、すごい音がしたけど大丈夫かー?

営業マン・基本

あ、店主が戻られたようですね。ご主人、お客様がいらっしゃってます

オーナー・笑顔

やれやれ、これでやっと荷物を処分してもらえる

執事・基本

さ、行きましょうお嬢様。壺のことを謝らないと

姫・照れ

うぅーむ、あんなに見事に砕け散るとはのぅ……

ぞろぞろ……

営業マン・照れ

……すみません、いろいろとさわがしくて

OL・笑顔

うふふ。たまには、ここも忙しいことがあるんですね

営業マン・基本

今日はもうこんな時間ですし、あなたも明日の仕事があるでしょう

営業マン・照れ

今日はすみません。本を修繕する時間を取れなくて……

OL・基本

いえ、いいんです。本を修繕しようと思って来ましたけど、今日はにぎやかで、楽しかったから

OL・笑顔

いろんな辛いこと、忘れちゃいました。だから、今日は大丈夫です。本を修繕しなくても

営業マン・笑顔

……そうですか。なら、本の修繕はまたの機会にしましょう

営業マン・笑顔

君を手に入れる機会も先延ばしですが、それもいいかもしれません

営業マンとOLも楽しい時間を過ごせたようですね。

一方、不穏な空気が漂うのはお店の裏。ちょっと覗いてみましょう。

執事・悲しい

お嬢様。先ほど割った壺ですが……

姫・怒り

なっ!? なんじゃ、この値段は! ゼロが5つばかり多くないか?

執事・基本

あの壺、本当に歴史的価値のあるものだったそうで……

姫・基本

いくら貴族でも、わらわのおこづかいでは払いきれん

執事・悲しい

そもそも、お嬢様は甘味屋へのきんつば代でおこづかいを3ヶ月前借りされています

執事・基本

旦那様に報告するしかありませんね

姫・怒り

そ、それでは怒られるではないか! 執事、なんとかせい!

執事・基本

使用人の安月給では無理でございます

姫・怒り

い、いやじゃ! 怒られるのはいやじゃー!

お嬢様のほうは、楽しんだ代償が高くついてしまったようです。

それでは、今回の催眠騒ぎはこれにて閉幕です。

またの機会にお会いしましょう。

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