第41話 再会の超魔術
なかなか転生した彼女を見つけられないクモとサソリ。
二人は一度クモの城に戻ってきたようですよ。
オレも焼きが回ったかもなぁ……
ひとまず城に戻ってきたことだし、少し休んだほうがいい。雪山に登ったり、かなり体力を使ったからな
幽霊呼んだり、他人の城に忍び込んだり、今回は大冒険だったもんな
笑っている場合か。貴様には次こそ彼女を見つけてもらわねばならんのだぞ
うぅ……肝に銘じます……
ご主人様、お客様が……
来たか。通せ
珍しいな、お前が客と会うなんて
この近くに立ち寄っている旅芸人の一座を呼んだのだ。なにか情報を持っていないかと思ってな
ご機嫌麗しゅう。このたびはお招き頂いてありがとうございます
あんたが座長か? ずいぶん若いんだな
私はしがない手品師でしかありませんよ
こちらの座長が体を壊しているので、手品を通じて親交のあった私が代役を務めている次第
代役でも、任せられるだけすげーって。謙遜しやがって!
ありがたいお言葉です。それでは、ご声援に応えていつもより盛大に……
おい手品師。芸を披露する必要はない。私はお前に聞きたいことがあるのだ
これは貴族様。あまりせっかちなのはよくありませんよ。まずはひとつ、あいさつ代わりに我々の芸をご覧ください
あいさつなどいらん。私は急いでいるのだ!
まぁまぁ、クモもそう怒るなって。せっかくなんだから、見せてもらえばいいじゃねえか
貴様、またそうやって悠長なことを……!
せっかくの休憩だろー? オレを休ませてくれないと、まーた変なトコつれていくぞー?
……くっ。それを引き合いに出されると私には言い返す言葉がない
それでは、僭越ながら披露させていただきましょう。まずは簡単な奇術、そして曲芸、ジャグリングなどなど……
おおっ! 帽子からハトが出てきた!
……ほう。あの身のこなしは見事だ。人間もやるな
楽しんでいただけておりますか?
サーカスも手品も、ベタだけど実際に目の前で見るとすげーな!
少しは認めてやらんでもない
それでは、最後の超魔術をご覧に入れましょう。ここに用意したのは大きな箱と……
ごきげんよう、紳士の皆様
こちらの美しいご婦人です
このご婦人に箱に入ってもらって……
ガチャン!
鍵をかけます
おぉ……なんかドキドキしてきた
単純なやつめ。どうせ開けたらいなくなったり、そういう奇術だろう
いえいえ、ただいなくなるだけでは芸がない。この箱を開けると……!
なんと、入れ替わってしまいましたー!
さぁ、拍手喝采を……ん? 赤い髪のお方、どうされました?
こ、こ、ここ、この子だー!
いきなり大声を出すな! どうしたというのだ
感じるぞ、この子が、箱から出てきたこの子が、転生したあいつだー!
…………
………
……
私は小さいころから身寄りがなくて、この一座にお世話になっていて……
そうだったのか。しかし、これからは私とサソリが君の家族になってあげよう
旅芸人として世界を回ってたとはな……オレたちは、その通ったあとを追ってたわけだ
私たちが行ったときには、すでに立ち去ったあと。見つからないわけだ
本当にいいんですか? こんなに立派なお城に……
それが私たちの願いだからね。そう、ずっと、ずっと願っていた……
座長には私から話を通しておきましょう。この子が幸せになるなら、座長も喜ぶでしょう
これから、よろしくお願いします
こっちこそ! ようやく出会えたな。これで、また一緒にいられる
あぁ。私と、サソリと……3人で一緒に、な
クモとサソリの大冒険、ようやく一件落着となりました。
恋の催眠騒ぎ第9章も、これで閉幕となります。
また次の機会に、お会いしましょう。
それにしても、サソリの嗅覚がこうまで外れるとはな……