第45話 おもしろギャグ合戦! 誰がためにネタは成る
姫を救うという当初の目的は遥か彼方へ。
『おもしろギャグ合戦』の闘いの火ぶたが
今まさに切られようとしていました。
はいはーい、そこの悩んでる海賊さんは置いといて、ボク最初いっくよー!
ここの肘の部分を人差し指と中指でつまんでー、はいこれ何に見える?
なんですかそれは
だからー、お尻
いきなり賭けに出ましたか
zzz……
でも女神さまってば完全に夢の世界だよー!
ではここは弟に代わってオレが……
まずこの長い髪をほどいて……井戸から這い出る女の霊のマネを――
ぎゃああああああ、兄さんっ! それシャレになってないよ、そのビデオテープ何に使うの!?
これはあの子の寝姿を終始録画したオレの趣味のビデオ。つまり単なる小道具です
残念だがクスリともできぬわ。次だ次
では私が。マダム、少々お体を拝借して腹話術師のマネを一緒に
ふふ、よくてよ
あなたの手により私の新たな一面が花開かれる……きっと甘美なる大人の世界ね
女王蜂の甘美なる交合――!
ちょっと待ってー! なんか大人的なピンクの雰囲気になりそうだからダメーっ!
というかなんですか? 何ちゃっかり販促してんですか?
ならばここはインドで学んだ幽体離脱を披露いたしましょう。ムン!
もう幽体離脱は十分だ!
そうです。みなさんお待ちくださいませ! これはすでにただのモノマネ合戦なのではございませぬか?
そうだ。俺の姫を思う気持ちがあれば、このような者の力など借りずともできる……できるはずなのだ
よいからとっとと媛を起こさぬか、このままでは媛がまた長き眠りについてしまう
はあ……結局ぐだぐだの展開ですね。お姫さんも日暮れと共にオレたちの仲間入りですか
……っ!! で、でも海狼は! 頑張りましたよね!? 私が現世に戻れなくても……ギャグを! 考えて! くれましたよね!?
も、もちろ……! ……いや、今回俺は……何の成果も得られませんでしたァアア! 俺がただ無能なばかりにいたずらにお笑いを並べさせ……皆の失笑じみた暴走を止める事が! できなかったのだああ!
その時です。
街の奥からスーツを来た青年が
その場に通りがかりました。
ふむ……自らの真の敵は自分ということですか……
む、そなたは何者だ!
僕は通りがかりの営業マンですよ。
不思議ですね。めずらしい骨董品の匂いがすると思えば……大樹、ですか。
確かにこの辺りだけ、春の香りが強くなっていくような
むむっ、なんだその不気味な書は
すや……なんだか騒がしい……ハッ、ここは……
まあ! 女神さまが起きたわ
なんだ、ただ騒げばよかったのですか
そこの海賊よ、そなたが優勝だ。なんでも望みをいうが良い
では、姫を元の姿に――
待って下さい。女の神よ。そこにある桜の巨木に花を咲かせてもらえませんか? あなたならそれができるはずです。私はただひとりの女性に、愛の証しとして桜の枝を贈りたいのです
ふわあ……あら、本当。季節外れだというのにツボミが芽吹きたがっている
桜の精のみなさん、早く起きてらして……
ブワっ!!
まあ、葉桜が一気に満開に!?
これは……奇術というより奇跡のようね
ふふ、ありがとうございます。ではお礼に……満開の桜といえば、やることはひとつですからね
パチンっ!
わあ! スーツのお兄さんが指を鳴らした途端にお花見セットが!
あなたは何者なのですかっ……て、姿が消えてる!?
彼だけではありません、古の神たちもいつの間にか消えてますが
そんな、では姫を助けるという私の願いはどうなるのだ!!
突然咲いた季節外れの桜。
日暮れのタイムリミットが近づくなか、
はたして姫の運命は!?
それでは次回
「思いは花びらの恋文に寄せて」
お楽しみに!
ギャグとは……ギャグとはなんだ…なんなのだ……