恋の催眠騒ぎ第11話「奇術師ワールド」

弟11話 奇術師ワールド

~前回までのあらすじ~

謎の仮面の男を捜し、甘味屋を出た一同。

すると店の前には深い森が広がっており、

森にそびえ立つ木の穴の中から奇術師の元へたどり着きました。

さてここはどこなのでしょうか。

そして、男の正体は明かされるのでしょうか?

奇術師・リアル

ここは皆様が期待された通り、私の織り成す不思議の国。どうぞごゆるりとお過ごしください。

囚人・怒り

はあ? 期待なんかしてねーし。つーか、ちょっと待て! 何でお前だけミニキャラじゃねーんだ!? 俺らなんか2.5頭身しかねーんだぞ! 一人でかっこつけてんじゃねーよ。

オーナー・基本

確かにそうですねえ。我々はこんなラブリーな姿しか与えられてないというのに。

シスター・通常

ラブリー……。

オーナー・笑顔

ん? シスター。もちろんあなたが一番ラブリーですよ。

囚人・怒り

似合わない言葉使ってんじゃねーよ! しかもシスターを口説くなって何回言ったら分かんだ?

シスター・怒り

また、そのような口の聞き方をして……。いけませんよ!

囚人・拗ね

ふんっ。お前はこいつの肩を持つのか?

シスター・拗ね

そ、そういうわけではありませんが……。

囚人・真顔

へえ……。

シスター・拗ね

な、な、何ですか。顔が近いです!

囚人・真顔

お前、こういう男が好きだったのか。聖女様は俺だけじゃ飽き足らず、甘味屋にまで――。

バシッ

囚人・拗ね

いってー!

シスター・拗ね

あなたがおかしな事を言うからです!

姫・怒り

シスター。甘味屋のようないかがわしい奴とは関わらぬほうが身のためじゃ。奴の取り得は甘味だけじゃからな。

執事・怒り

その通りです。いつも、私の大事なお嬢様にまでとんでもない毒牙を向けますし、甘味につきましても甘いと言うことであれば私のタルトだって十分に甘く、お嬢様には喜んでいただいております。

オーナー・?

私はまだ何もしていないというのに、ひどい言われようですね。

囚人・怒り

まだー!?

執事・怒り

……はあ。それよりも今は、他に明らかにするべきことがあるのではないですか?

シスター・拗ね

そ、そうですよ!

奇術師・リアル

ああ、忘れられたかと思いましたよ。賑やかな方々だ。

オーナー・ニヤリ

これはどうも。しかし色々と華やかな事をされ賑やかなのは、あなたの方ではありませんか?

奇術師・リアル

それは光栄です。私は人を魅せ、もてなすことを生業としております。では本日は、せっかくお越しいただいたお礼に、終わらないお茶会を皆様に……。

執事・基本

終わらない……?

パッ

姫・笑顔

おお! 急にテーブルセットが現れたぞ!

奇術師・リアル

ではお次は。

パッ

シスター・笑顔

今度はティーセットです!

奇術師・リアル

それでは、お茶菓子は何がお好みでしょうか?

姫・笑顔

お菓子か! わらわは何でも良いぞ! お前の一押しを出して見せよ。

奇術師・リアル

はい。かしこまりました。

パッ

姫・笑顔

おおおおお!

シスター・笑顔

わあ!

囚人・通常

女2人の目が輝いてねーか……?

オーナー・基本

そうですねえ。やはり、手の早い男性に女性は惹かれるのでしょうか?

囚人・真顔

……お前が言うと、色んな意味に取れるぞ。

オーナー・笑顔

ニッコリ

執事・悲しい

ああ……お嬢様……。また怪しげなものを口にされてはいけませんよ!

姫・怒り

何があやしいのじゃ! こんな綺麗で美味そうなお菓子を前にして、わらわに我慢しろと言うのか。そんなのはいくら執事の頼みでも聞けんぞ。

姫・照れ

じゅるり……。

執事・基本

お嬢様、よだれが。ほら、口元を拭きますよ。

奇術師・リアル

ほらどうぞ。召し上がってください。本日は麗しきご婦人お二人のためにご用意致しました。

囚人・怒り

はあ!? 俺はどうなんだよ! わざわざこんなとこまで来てやったんだぜ。

奇術師・リアル

…………。

囚人・怒り

何で黙るんだっ!

奇術師・リアル

フフッ……。

囚人・怒り

今度は笑いやがった!!

オーナー・基本

まあ、いいではないですか。温かいうちにいただきましょう。

姫・笑顔

……ん。これは美味じゃ!

執事・悲しい

ああ。お嬢様……。

シスター・笑顔

本当! おいしいですねー。

囚人・拗ね

…………。

奇術師・リアル

お気に召されたようで光栄です。私のショーに限りはございません。いくらでもお出ししますのでお楽しみください。

姫・基本

うむ。

シスター・笑顔

素敵ですね!

オーナー・基本

しかしあなたは一体、何者なのですか?

奇術師・リアル

フフッ……。

囚人・怒り

笑ってるだけじゃ分かんねーっつうの!

奇術師・リアル

私は世の女性の夢心を満たす奇術師。お望みとあらば、いつでもどこでも参上致しましょう。私のショーをまた恋しく思った際には、私をお思いください。

姫・笑顔

おお! それは助かる。

執事・悲しい

お嬢様! おやつならいつも私がご用意しておりますのに。

姫・基本

これもまた、新鮮じゃ。

オーナー・笑顔

おやおや。振られましたね。

執事・照れ

っ!!

奇術師・リアル

フフッ……フフフッ……では、またの機会に――。

シュンッ

囚人・怒り

消えたっ!?

姫・笑顔

ん~。うまい、うまい。

シスター・笑顔

ハア。おなかいっぱいになってきました。

オーナー・笑顔

シスターのそのように満たされた顔、初めて見ましたよ。今度は二人きりでじっくり……。

囚人・怒り

だああっ! 帰るぞ、シスター!!

シスター・通常

え? は、はい。

姫・基本

どうやって帰るのじゃ?

囚人・拗ね

…………知るか!

執事・怒り

意地でも帰りますよ、お嬢様。

姫・怒り

いやじゃ。

執事・悲しい

お嬢様!

姫・怒り

ふんっ。

奇術師

フフッ……フフフッ……。

どこからとも聞こえてくる奇術師の怪しげな笑い声。

それを遠くに聞きながら、

一同はまだ騒動を繰り返しているのでした……。

さて、今回のお話はひとまずこれでおしまい。

皆さんが恋しく思えば、

また奇術師が現れてくれるかもしれませんね。

それではそのときまで。

ごきげんよう――。