戦後のキャバレーを舞台に、麻薬〈角砂糖〉をめぐり愛憎渦巻く男女を描いた大人の恋愛シチュエーションCD『キャバレーと角砂糖』シリーズ。
3月17日と5月12日に、『キャバレーと角砂糖』の制作秘話をお届けするTwitterスペースを開催いたしました!
皆様から寄せられた質問にお答えしつつ制作の裏話をお届けした内容を、レポートにまとめました。
内容たっぷり、ネタバレも込みでお届けいたします。
どうぞお楽しみくださいませ!
シリーズ概要
戦後、日本――。
明日への希望を見出した日々の中で、
男と女が蠢くネオンの陰で、
それは静かに広まった。
〈角砂糖〉
ある者はカネのために。
ある者は快楽のために。
甘い蜜を求めてキャバレーを訪れる。
愛し、愛されたい。
この人と生きていきたい。
その欲望こそが、
彼らを〈角砂糖〉へと駆り立てる――。
――そう。これは、おのが半身に出逢うための物語。
『キャバレーと角砂糖』とは戦後のキャバレーを舞台に、麻薬〈角砂糖〉をめぐり愛憎渦巻く男女を描いた大人の恋愛シチュエーションCDです。
全編ダミーヘッドマイクで収録し、黒い令嬢ならではの設定や史実、演出、SEでお届けします。
第1回(3月17日開催)
■『キャバレーと角砂糖』が生まれた経緯
鬼むぅ:企画が『キャバレーと角砂糖』という形になったのは2021年で、2021年末から制作が始まりました。
企画を作っていた当時は新型コロナがまだまだ流行しており、飲食店などが閉まっている街の姿が寂しいなと感じ、逆境の中でも頑張っている人や世の中の姿を描きたいなと思って企画したものです。
企画書には「どういう気持ちで企画を作ったのか」「こういう感情を届けたい」という想いを冒頭に載せており、『キャバレーと角砂糖』ではこのような内容でした。
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コロナ禍では誰かに会うにも特別な理由が必要で、全てオンラインで済ませていくうちに、自分の感情が全てにおいて希薄化してゆくのを感じた。
結局、特別な体験や特別な感情はチリチリした人と人との摩擦でしか生まれないのかもしれない。
とすれば、ネガティブに捉えられ、忌避されがちなチリチリした摩擦こそが人生ともいえる。
戦後日本。正負混ざり合う摩擦だらけの時代、場所。
闇市がたちストリートチルドレンがあふれ、路地で復員した傷痍軍人が物乞いをした瓦礫の街。
そこにひしめく欲望、慟哭、そして何をしてでも自分の人生を生き抜くんだという希望。
その生臭い匂いが閉塞しきったわれわれを救ってくれるに違いない。
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■イラストレーターさんはどういった経緯で決まったのか
鬼むぅ:イラストを発注する際は「こんな風にしたい」というイメージがあり、それに合う方を探すというのが基本の進め方で、今回はRylee先生が合っていたのでお願いしました。
『キャバレーと角砂糖』に関しては、綺麗系ではなく力強さや粗削りのキャラクターの魅力、息遣いが聞こえてくるようなイラストにしたく、「とにかく粗めに描いてください」とオーダーしました。といっても本当に繊細で、美しいイラストになったと思います。
■キャストを選ぶ決め手はあるのか
かほく:キャラクターに合っている声という点を最初に考えます。
鬼むぅ:決めるタイミングは、企画段階ではあまりないですね。キャラクターがいて、脚本が出来て、声はこの方がいいなというのを選んでいきます。
かほく:堀川先生は結構声優さんに合わせて執筆することが多いみたいですが。
堀川:私の場合は、もし執筆を始める段階でキャストさんが分かるのであれば、考慮しながら書けたらいいなと思っていて、ご依頼いただいた時にキャストさんを伺ったりします。
■『キャバレーと角砂糖』でのキャスティング裏話
かほく:最近ひつじぐもでは冬ノ熊肉さんに続けて出演いただいてるので、冬ノ熊肉さんはスムーズに決まりました。大変だったのが、2巻の土門熱さんと4巻の早川優雅さんです。4巻に関しては歌が入るので『歌の許諾がいただける方』という点でなかなか大変でした。OKをいただいたときは嬉しかったです。ちなみに早川さんの歌の収録はほぼ20分で終わりました。
■シナリオを書くうえで苦労した点やこだわりを教えてほしい
かほく:1巻の尾田進くんは、1巻目ということや色々迷いもあって結局全直しをして結構苦労しました。時代感とかも難しいですし、口調などを調べたり映画を観たりして、リアルなものを追求していきました。収録現場では、進役の冬ノ熊肉さんの演技プランと制作側のイメージが少し違っていたのですが、冬ノ熊肉さんがその場で色々調べたり、納得するまでやりましょうと言ってくださったりで、すごい頑張ってくださいました。4巻の響のプロットは5回ぐらい直しました。
堀川:ジョンはかなりデリケートなキャラクター設定だったので、自分でも出来る限り調べようと思いました。でも資料がものすごく少なくて。結構頑張りました。私が時代ものを書くときは、この時代に書かれた小説や映画をなるべく見るようにしていて、この時代に無かったものや言葉は出さないようにしています。ジョンさんがすごく真面目な人で自分とは真逆なので、真面目な人はどう考えるのかなというのを考えて書くのが大変だったなと思います。学さんは、キャラ的には書きやすいんですけど、初稿に対するリテイクで『ヒロインへの情熱が少ない』って言われたんです。
かほく:学がちょっとクールガイなので、もうちょっとキャラクターを守りつつヒロインへの愛だけはすごく感じたいっていうお話をお願いした覚えがあります。
堀川:やっぱり年がとっても離れてるって事と、最初からガンガン行くのは違うと思ったし、あとは苛烈な人生経験を経た男の大人の余裕は欲しいなと思っていたので、リクエストいただいた『情熱的なところ』をどう出したらええんかなっていうのはちょっと悩みましたね。
■進は今でもピアノが弾けるのか
かほく:進は本編後もサックスは時々吹いているという設定になっていまして、進編のヒロインも歌を歌っているような、家族で音楽を楽しむという家庭だったので、ピアノは弾けます。
■進は夢をあきらめて愛を取ったが、彼はそれで幸せだったのか
かほく:どっちでも正解だったと私は思ってます。どっちでもきっと進だったら幸せになれる力があったんじゃないのかなと私は考えてます。
鬼むぅ:他人の幸せをあんまり自分でジャッジしたくないなと思う派なので、彼にしか分からないことなのかなとは思いますね。
■ジョン編のジャケットに描かれている写真は何か
鬼むぅ:これはジョンの家族だと思いますね。Rylee先生が企画書を見て描いてくださったので、ジョンとその家族です。
■ジョン本編のその先の話について何かイメージはあるか
堀川:私の個人的見解ですが、ジョンは多分ヒロインに一途だったと思います。ただヒロインのほうは、時代がそれを許したのかということをちょっと考えてしまいます。ヒロインは強い人なので、ジョンをひたすら待ち続けて、例えば周囲から進められたり強制される結婚とかも全部蹴って逃げ回るっていうこともできたかもしれないけど、それも難しい時代なのかもしれないとも思う。ただジョンは一筋だったと思います。
第2回(5月12日開催)
■学兄ちゃんは妹さんがつくったあだ名なのか
堀川:ヒロインちゃんのお父さんが多分『がく!がく!』って呼んでたんだと思う。それを聞いてたヒロインちゃんも『がく』って言いだして、『兄ちゃんをつけなさい』って怒られて、学兄ちゃんになったんじゃないかなと思ってます。
■不破兄妹の昔のエピソードがあれば教えてほしい
堀川:ヒロインは結構活発な子に育っているので、いっぱい遊んであげてたんだと思うんですよね。ただ学さんには兄妹とかいないんで、基本的には竹馬とかけん玉とか、紙芝居に連れて行ったりとか、本をいっぱい読んであげたり、星とかお花の名前とかを教えてあげたりしてたんじゃないかなと思います。
■不破兄妹はお互いのことをいつから異性として意識していたのか
堀川:ヒロインちゃんは、もう気づいた時には好きだったんじゃないんですかね? で、お嫁さんになると決めていたと思います! 学は本人が言う通り、女として意識したのはステージを見た瞬間だったと思います。
■学は妹が復讐しに来なかったら一生妹と会わないつもりだったのか
堀川:一生会わないつもりだったと思います。動向だけはずっと探り続けてたと思うので、例えば変な男に引っかかったり、苦境に見舞われてっていうのがあったら、正体を明かさず、間に人を何十人も挟んで陰から助けたと思います。
■響編ヒロインにはフィアンセがいるとストーリー内で言っていたが、そもそも実在していたのか
かほく:本筋ではないので、本編ではさらっと流しちゃってたんですけど、フィアンセは本当にいます。親が決めた縁談でちゃんと実在してて略奪愛です。響が真っ当に落として惚れさせて奪った形になってます。
■響が登場した時代(1968年)に角砂糖は特典を除き登場しませんでしたが、その時代には既に存在しなくなったのか、細々と残っているのか
鬼むぅ:1968年には角砂糖そのものは、ほぼない、その昔あったんだろうなっていうものになっています。でも、形や名前を変えて様々な方法で利用されています。
堀川:学が考えている『角砂糖の原料畑は違うものにする』という構想を実現できていたら有難いですね。大本は学が把握してて《角砂糖》と称されているものに関してはもう無くなったという、学が目指しているところが実現できていたら嬉しいっていう感じです!
■シナリオを書く時、大切にされていることや特に意識されていることがあれば教えてください
堀川:シナリオを書く段階でイラストが完成していることが少ないので、あまりイラストからキーアイテムを盛り込むということはないんですよ。でも、今回はとんでもなく美しいものが出来上がってたので、何か盛り込みたいなと思ってジョンの写真のエピソードなどを追加しました。
かほく:私もキャラクター重視派なので、好きな食べ物とかメニューとかリアルな人間が日常会話でしそうなものを心掛けていて、より登場人物にリアリティを追加していくことに気を付けています。このシリーズはリアリティのある人間を追求していくっていう書き方で正解だったのかなと思ってます。
■「三百三十三」の歌詞や曲に込めた思いなどを聞きたい
鬼むぅ:最初この歌を4巻で流すことは決まっていたんですけれども、シナリオができておらず、プロットもかなりの直しが入ってしまってて、私的には最終的にこのシリーズの結末がどうなるのか確信が持てず、悲しい歌にしようと思っていました。その時にかほくさんから「これは絶対HAPPY ENDで終わるから!凄く明るくて皆が盛り上がるような歌にしてください」と言われて。シナリオも読み返したりしながら『響君の時代はきっとこうなるんだろうな』っていうのを想像して、かほくさんのシナリオを信じてあの歌詞を書きました。
レポートは以上となります!
『キャバレーと角砂糖』はシリーズ全4巻が好評発売中です。
引き続き『キャバレーと角砂糖』シリーズをよろしくお願いいたします!