恋の催眠騒ぎ第5話「囚人現る」

第5話 囚人現る

~前回までのあらすじ~

嬢様と執事は無事(?)日本にいる甘味屋のもとへ

携帯を届けて帰ったようですね。

さて本日は、ゆったりと庭でお散歩を楽しんでいるようです。

執事・笑顔

お嬢様。温かな日差しが降り注いで、今日は本当に良いお散歩日和ですね。

姫・照れ

……はっくちゅん!

執事・悲しい

ななっ! お嬢様! これは大変です。風邪を召されては……はい、お鼻をちーんしてください。

姫・基本

ちーん! ずずっ。

執事・基本

それから上着ももう一枚と、ひざ掛けも。

ばさっ

姫・基本

あ、なめくじが這っておる。

執事・基本

お嬢様、あと帽子もかぶってはいかがでしょうか。

ばさっ

姫・基本

お。ここには毛虫がぶら下がっておるぞ。

執事・笑顔

しかしお嬢様。冬のお庭というのもまた風情がございますね。こんな美しい景色をお嬢様と見られるなんて、私は……。

姫・怒り

アリんこめ。昨日、わらわが落としたおやつを食べておる。

執事・笑顔

私は、こんなに幸せなことはございません。お嬢様も、この幸せなひとときを喜んでくださっているでしょうか。

姫・照れ

は、は、はっくちゅん!

執事・悲しい

あ。またお嬢様、お鼻が……。

姫・基本

ちーん!

執事・悲しい

寒いようでしたら、私が抱きかかえてお散歩しても良いのですが、いかがでしょうか?

姫・基本

雪が降りそうじゃな、執事。

執事・基本

え? ……はい。少々曇ってまいりましたね。

と、そんな2人の様子を木の陰から見ている人物が1人……。

オーナー・基本

あの2人はいつもあんな感じなのかな……。

メイド

あれ? 甘味屋さんですか? そちらで何を……っ!? んん……っ! もごもご……。

オーナー・笑顔

しっ……静かに。可愛いメイドのお嬢さん。

メイド

は、はい……静かにしますので、手を離していただけますか……。

オーナー・笑顔

おやおや、これは失礼。ちょっとお嬢様と執事さんのほんわかシーンを見ていたのですよ。

メイド

ほんわか……?

オーナー・笑顔

ええ。ある意味、執事さんはスゴイなあと思っておりました。さすが兄弟子……。

メイド

そうですね。お嬢様の溺愛ぶりは私どもの間でも有名です。

オーナー・基本

なるほど……では、私たちも2人きりでゆったりと過ごしてみましょうか? こんなにお綺麗な方とこうして寄り添っていられるなんて、本当に光栄です。

メイド

え……? あ、あの……。

姫・怒り

甘味屋! そこで何をしておるのじゃ!

オーナー・?

……もう見つかってしまいましたか。

姫・怒り

またおなごと、そのような場所でいかがわしいっ! そのような事のために城に参るなら即刻貴様は出入り禁止じゃ!! もう貴様のとこの甘味は食わんからな!

オーナー・笑顔

それは残念です。本日は試作品をお持ちしてみたのですが……。

姫・照れ

うっ……。

オーナー・笑顔

ほら、今回もあま~いあんこたっぷりの、かぐわしい甘味でございます。ふんわりと、甘い香りがいたしませんか……?

姫・照れ

んん……くんくん…………ぱくっ。

執事・悲しい

お、お嬢様! つられて口にされてはなりませんよ。

姫・照れ

だ、だって……美味い……。

オーナー・ニヤリ

……これは結局は餌付けということでしょうか……ふふっ。

姫・怒り

ん? 何か言ったか、甘味屋。ブツブツ言っておらんと、コレは一つしかないのか?

オーナー・笑顔

あ、いえ。まだございま……。

びゅんっ ぱくっ

囚人・笑顔

ん。これ、うめーじゃねえか。もぐもぐ……。

オーナー・?

…………?

姫・照れ

ななななっ……。

執事・怒り

な、何者ですか!?

姫・怒り

わ、わ、わらわの甘味を……甘味を……甘味を……。

囚人・通常

あ? 何プルプル震えてんだ?

姫・怒り

き、貴様がわらわの甘味を食ったからであろうがっ!!!

囚人・ウインク

あー、わりいな。なーんか美味そうな匂いでさ。

姫・照れ

うううううう……。

囚人・通常

まあそうケチケチすんなって。あんた、せっかく可愛い顔してんだからさ。なあ……どこのお姫さん?

執事・怒り

失敬な! 我が主に近づくことは許しません!

囚人・拗ね

ああ、そう。悪かったな。こいつ、あんたのなんだ?

執事・怒り

お、お嬢様をこいつ呼ばわりとは……何たる侮辱!

姫・怒り

もう良い、執事! さっさとこの無礼者をつまみ出せいっ!!

シスター・怒り

ここにいたんですね! 何をしているのですかっ!

囚人・怒り

うっ。いってーな。急に引っ張んじゃねーよ。

シスター・怒り

あなたが脱獄などするからです。これは神からの罰だと思いなさい!

囚人・怒り

思えるかっ! だから耳引っ張んじゃねーっ!!

シスター・笑顔

皆様、お騒がせをいたしました。それでは皆様に神のご加護があらんことを……。

スタスタスタ ズルズル……。

囚人・拗ね

引きずるなーっ!!!

シスター・怒り

静かになさいっ!

姫・基本

…………。

執事・基本

……………。

オーナー・?

…………。

執事・悲しい

お、お嬢様っ! ご無事でございますか!? 汚らわしい手に、触られてなどおりませんでしょうね!??

姫・怒り

……何者だったのじゃ?

オーナー・基本

不思議なお二人でしたね……しかし、あのシスター様はお綺麗でした。あのようなシスターのいる教会なら毎日でも……。

姫・怒り

ええい! 汚らわしいのはこの甘味屋じゃ! さっさと試作品を置いて貴様も出て行け!!

おやおや。

何だか大騒動になっているようですね。

しかし不思議な少年とシスターの登場に、

みんな驚いているようです。

では次回は「少年とシスター」

2人の謎が明かされる!?