ご無沙汰しています。シナリオライターのかほく麻緒です。
第2回から引き継ぎ第3回を担当させていただきます。第2回の流れから、当時の苦しかったスランプ、そして感応時間が生まれた瞬間のことを。
──それは、不定期に訪れるこの世で一番恐ろしい『スランプ』という状態の最中、島田がほぼほぼ私のために企画してくれた、檜原村行き直前から始まります。
終わりの見えない真っ暗闇のスランプ中、出口を求めてシナリオを書き続けていた。
数時間後には、出発しなければ。しかしシナリオは終わらない。書いても書いても終わらない。さして量があるわけではない。けれど終わらない。それは私がスランプだからだ。書けども書けども、いつものように速くは書けない。その上、気にくわないので何度も自分リテイクをしなければならない。涙がこぼれてくる。泣きながらシナリオを書き続けた。
時間は出発2時間前となり、その瞬間。
速度が、ほぼ4倍になった。嘘でも例えでもない。4倍になった。いつものことだけれど、苦しみながら書き続けた結果、ふと……何かのスイッチを入れたかのように、その時は訪れる。スランプ脱出の瞬間だった。
無事シナリオを終え、島田を迎えに行く。高速に乗る。ひっそりと涙が滲んだ。ああ、今回も脱出できたと……。
これまでスランプから立ち直らなかったことはなかった。けれども、あの暗闇の中ではいつも思う。私はもう二度と抜けることはないのだと。
高速に乗り、たくさんの話をした。企画のことを話し、仕事のことを話し、その内に不思議と頭がクリアになってくる。頭の中にずっと広がり続けたモヤも晴れた。
自然を堪能し、檜原村から戻っても仕事は山積みで休む暇もないのだが、それでよかった。それが幸せだと、以前のように思えるようになっていた。解放された。
──大丈夫。感応時間が書ける。
そう、確信した。
檜原村に一泊し、帰り道もまた話をする。くたくただった。体の疲れとは裏腹に、早く一刻も早く、感応時間が作りたかった。
「すぐプロット上げるので、確認お願いします」
「必要ないと思う。感応時間に、がちがちのプロットは必要ない」
私達は、ステージアップしたと思う。詳細なプロットが必要な作品と、感性と感情の流れのみが必要な作品を、かぎ分けることができるようになった。必要なものを必要な時に作成する。
そして今は、詳細な構成など不必要だった。
プロットや詳細な設定は、発想をそこに縛りつける。それ以上のものを生むことはできない。私は、1時間のドラマを描くことに、全身全霊をかけて注力した。
またこれからも、スランプには陥り続けるだろうし、未熟でも在り続けるのだろう。
ただ、これまで私が多くの人と出会い思ってきたことと同じで、誰かの心を惹きつけるものは、必死に手を伸ばした先のもの、精一杯背伸びをして作ったもの、苦しみの果てに作り上げたもの……。そういうものに違いない。
そう私は信じて、これからもシナリオを書き続ける。
第4回は10月17日公開予定。