第29話 猟師の好みは……?
檻から脱出した一行を、待ち構えていたのは猟師でした。
この先は、彼を説得しないと進めなさそうですが……。
ああそうだべ。部外者は立ち入り禁止だ!
しかし、この森に攫われた女神がいるかもしれんのだ。そなた、森にある泉の場所を知らないか?
オラには関係ないべ! 美しいおなごなら教えてやらなくもないが、男ばかりではな。
チッ。そんじゃ、無理やりにでも吐かせて――。
まあ、待て。我は暴力的な解決は好かぬ。
じゃあ、どーすんだ?
男よ。美しい女人になら、泉の場所を教えるのだな?
そうだっぺ!
では……。
鬼は片手を猟師の頭の上に乗せました。
な、なんだべ? 頭が……ぼうっとして……。ん? おなごが! おなごが沢山いるべ!
……一体、何をしたのですか?
幻術を使った。この男の目には、我らが女人に見えている。
ってことはボクも? わー、なんかあの人目がギラギラしてるよ……。
おお、美しいおなごだべ……。
ちっ。触んなよ。オレそんな趣味ねーぞ?
……なんという口の悪さ。見た目が良くとも、中身がこうでは、ガッカリだべ!
あーん? 何言ってんだ?
よいか、お前達。ここは女人らしく振舞って、泉の場所を聞きだすのだ。
そう言われてもなー。
ほほ。そう言われましても、でしょう。言葉遣いにはお気をつけあそばせ。
げっ。甘味屋。なんかサマになってんぞ。
ほお、なんと妖艶な色香漂うおなごだっぺ……!
お上手ですこと……。では泉の場所を教えて頂けますかしら。
しかし惜しいっぺ。オラ、色香より清純派なんだっぺ! よし。この中にタイプの子がいたら、場所を教えてやってもいいっぺ。
なんかすげームカつくな。このエロオヤジ。
えーと、ボク……私からもお願いします。ほら、にーさ……ねーさまも何か言ってよ。
ふう……。素敵なおじさま、お願いします……。
影のある美人姉妹とは……オラのツボを突いてくるっぺ! しかし、まだまだ、タイプど真ん中とは言いがたい……。
もう。やってらんないよー。
では私の魅力で……。
いやー、すまんがあんたも、オラのタイプとは違うっぺ。
……。
やれやれ。なかなか好みのうるさい方の様ですね……。
その時、猟師がきらりと目を光らせました。
おおっ。なんとエレガントなおなごだべ! あんたこそ、オラのタイプど真ん中だべ!
う……鳥肌が……。
頼む。そなたが頼りだ。
コホン。……では、泉の場所を教えてくださるんですね。
ああ。あんたに言われちゃ仕方ねえ。泉の場所は……。
ふんふん、なるほど。
本当に好みだっぺ……。
ベタベタ
ひっ。おぞましい! 私に触れて良いのは、お嬢様だけです!
ドン!
いてて……ん? おなごが居たはずなのに、男がいるっぺ。
どうやら術が解けてしまったようだな。まあ、泉の場所も聞き出せたことだし、もう用はない。
ま、待て! おまえら、オラを騙したな! ……うわっ。
猟師は一行を追い駆けようとして、派手に転んでしまいました。
くすくす。さっき草を結んで作った罠。見事にひっかかったね、にーさん。
ええ、暇を持て余して作った甲斐がありました。
おお。見事に陰湿な罠だな。
ほほほっ、皆さん、無駄話をしていないで、先を急ぎましょう。
……。
チームワークで何とか泉の場所を聞きだした一行ですが、
さてさて、これからどうなることやら……?
この森は、そなたの所有する森なのか?