これでようやく感応時間が完成した、と言いたいところですが……最後の難関が残っていました。
当初の企画書では、ギャンブラーものということで、サブタイトルは「嘘と歓楽のジャックポット」。ちなみにヒロインの設定も、詐欺を働くギャンブラーを追う女性警官という設定でした。(最終的に、ギャンブラーとカジノ支配人の娘、という設定になっています)
勝ち続きのギャンブラーを、詐欺ではないかと追っている……という設定だったのですが、よくよく考えたらカジノで詐欺をしたくらいで警察が追うだろうか? そもそも民事ではないのだろうか?
そういう疑問点から、この設定は没。
「ジャックポットって何? 誰もわからないでしょ」
という意見からサブタイトルも没。
そこで再考になったのですが、これがどれもしっくりこない。
「今までどうやってタイトルを決めてきたんだろう……」
またここで悩み始める。
「キャッチコピーを変更しましょうか?」
かほくさんが言ってくれたのですが、
『僕は必ず君のジャックポットを引き寄せる――』
これはそのままがいい。
そんな時にかほくさんが、
「いつも一瞬で決めてましたよ」
「……」
「だから、考えたらダメなんですよ」
「じゃあ、考えるのやめます」
「はい」
「フォルトゥナに魅入られた男にします」
「それでいきますか」
勝運を我が物にするギャンブラー。本当は、運なんてものは当てにしていない。何も持たず、持とうとせしない。オーラで勝つような男だ。人として人と勝負する男なのだ。しかし、常人にはそれがわからない。ゆえに奴には幸運の女神でもいるのではないかと噂されている。
そういう男が、君が勝利の女神だね、とうそぶいてくる。彼からすれば、恋愛すらもゲームのひとつかもしれない。手に入らないからこそ、勝負をしかけてくる。とすれば、皮肉にもヒロインはギャンブラーの手に入らないと彼自身に知覚されることで、彼に勝利をもたらしているのではないだろうか。
考えれば考える程、このサブタイトルがぴったりなように思えてきた。
そこでやっと商品案内にサブタイトルを記入してもらうことができた。
たとえば、感応時間3。奇しくも東日本大震災4日後の発売。地震で今も揺れているときに聞いて心の慰めにしている……というお便りをもらったことがある。それに匹敵するものを今回、製作できているのだろうか。
こうして完成しつつある、3年ぶりのシリーズ新作、感応時間12 ~フォルトゥナに魅入られた男~。
そのルーレット・ゲームに、あなたは勝てるのだろうか――。