恋の催眠騒ぎ第24話「あなたは私? 私は私? あの時君は若かった」

第24話 あなたは私? 私は私? あの時君は若かった

~前回までのあらすじ~

執事とお嬢様を加えた甘味屋ご一行は、

初々しい味のお菓子を師匠に食べさせるために、

奇術師のテントへと向かうことになったのでした。

師匠・通常

ここが、その奇術師がいらっしゃるという場所ですか?

オーナー・ニヤリ

そこにおられる麗しい貴婦人、秋の実りを乗せた風流な和菓子はいかがですか?

マダム・基本

私のことかしら?

奇術師・ニヤリ

おやおや、今宵の貴方は私の奇術よりも、お好みの物がお有りなのですか?

マダム・あやしい笑い

ふふふ。嫌ですわ。お戯れはその辺になさってくださらないと

姫・怒り

こら~! 大人の時間はストップじゃ!! わらわ達はそんなことをしに来たのではなーい!

かくかくしかじか

奇術師・真顔

ほう、それでは初々しい味のお菓子をお求めになられて私の興業へ? しかし、私はしがない奇術師……

ポン!

師匠・きょとん

まぁ、紫龍。喋りながら奇術師さんの帽子の中から、栗ぜんざいとお抹茶が。あら、美味しい

オーナー・基本

(もぐもぐ)

これは丹波和栗と最高級の宇治抹茶。この奇術師なかなか侮れませんね

奇術師・笑顔

残念ながら菓子の作り方など知らぬが故、お役に立てるかどうか……

ポポンッ!

姫・照れ

こ、これは焼き立てのスコーンにたっぷりのクロテッドクリーム!(じゅるり)

奇術師・基本

お望みなら、季節のジャムも、お好きな物を出してご覧に入れましょう

姫・基本

なんて便利な術なのじゃ。執事よ、あの奇術とやらをお前も身につけるのじゃ!

執事・怒り

ダメです、お嬢様には私のアンジールだけで充分! 奇術師風情の出した物など、おいそれと召し上がらないでください

マダム・基本

ふふ、貴方の奇術に皆さん目が離せないよう。少し嫉妬してしまいますわ

奇術師・ニヤリ

奥様、貴方には後程特別なショーをお見せしますので、今宵は私めに時間を……

マダム・照れ

言わなくても、分っていましてよ

奇術師・お高く

さて、お菓子に限らず満漢全席からフランス料理のフルコースまでご用意できますが。
そうですね、こんな物はいかがでしょう?

ポンッ!

師匠・きょとん

あら、これは何かしら「感応時間6、紅玉の簪と紫龍の間」……?

オーナー・基本

奇術師、あなたは時空を歪める術をお使いになるのですか? これはまだこれから起こる未来の筈……

奇術師・ニヤリ

そういう貴方も何故か知ってらっしゃるとは。はて、どうでしょうか。

私の奇術をご所望になりに来たのでしょう? ならば、飛びっきりの奇術をご覧に入れましょう!

ぼっふ~んっ!!

謎の人影

……う、けほっけほっ

姫・基本

はわわわわ、煙りの中から怪しい人影がっ

若い頃のオーナー・基本

何処です、ここは? 師匠の言いつけ通りに葛を練っていたのに

師匠・きょとん

まあ! もしやあなたは?

若い頃のオーナー・基本

師匠! と、そこにいるのは……わ、私!?

奇術師・笑顔

ふふ。私の奇術で若きし頃の甘味屋さんを召還して差し上げました。これで初々しい味とやらも解決でしょう

オーナー・基本

そんな馬鹿げたことが出来るとは

マダム・あやしい笑い

まあ、甘味屋さんにも、こんなに可愛らしい頃があったのですね、うふふ

若い頃のオーナー・基本

師匠から離れなさい、そこの何ですか、ちょっと年を取った私!

オーナー・ニヤリ

ムッ、何を言うのです? まだ半人前の状態で

師匠・通常

そうそう……紫龍もまだこの頃は今より可愛くて。女垂らしなのは今と変わらないんですけどね(なでなで)

若い頃のオーナー・基本

師匠、頭をなでるなど止してください

若い頃のオーナー・ニヤリ

そう、真実を言えば、若い私の方が、貴方の心の琴線を甲高くつま弾けるのでしょう? 甘く、淫らに……

師匠・通常

まあ紫龍ったらいけない子

オーナー・基本

な、お前こそ師匠から離れなさい! 師匠はもう直ぐ嫁ぐ身なのですよ?

若い頃のオーナー・基本

なんですって? あなたは私のくせにそれを易々と受け入れたのですか!?

オーナー・基本

仕方がないでしょう

バチバチッ

奇術師・お高く

おや奇術を使った訳でもないのに火花が見えますね。た~まや~。

おおっと、これは花火の時の掛け声でしたか

姫・基本

ま、こうなってはもう、例の方法で勝敗を付けるしかあるまい。のう、執事?

執事・基本

お嬢様がお望みとあらば

~お菓子対決ラウンドツー! 「かつての甘味屋VS甘味屋」~

執事・笑顔

さあ、師匠を巡る熱い戦いのゴングが鳴り響きます。

新たなる至高のお菓子対決、ラウンドツー! かつての甘味屋VS甘味屋、ここにて開幕で御座います!

師匠・にっこり

やめてー、私のために争わないでー(棒読み)

姫・笑顔

なんと! ゴングも鳴り終わらぬ0.26秒の内に、両者自慢の和菓子を作り終わったじゃと!?

さ、早くその和菓子をわらわにもよこすのじゃっ

オーナー・基本

いざ実食をお願い致します。私のは、秋の夕暮を意匠とした柿羊羹です

若い頃のオーナー・ニヤリ

師匠、こちらを先に! 師匠が私に初めて教えて下さった和菓子「きんつば」です

姫・笑顔

おー、伝家の宝刀「きんつば」じゃ!

師匠・にっこり

では、きんつばを頂きましょう

師匠・きょとん

むむっ、こ、これは!?

師匠・通常

確かに、かつて食したあの初々しい味。これぞ私の食べたかった味

オーナー・笑顔

師匠、この際私のお菓子を軽々とスルーしたのは忘れるとして、では願いは叶ったのですね?

師匠・きょとん

…………

師匠・悲しい

確かにこの味は私の求めていた味。しかし、所詮、怪しい奇術を使用して成った甘味……何の価値がありましょうか

オーナー・ニヤリ

えー

師匠・通常

私は、今のお前の気持ちと初々しさの籠った味が食べたいのです

執事・基本

(師匠……まさかお嬢様の上を行く扱いづらさでは……!?)

執事・悲しい

甘味屋、少し同情しますよ

オーナー・基本

あなたに同情されるとは、私も焼きが回ったようですね

若い頃のオーナー・基本

何が何やら、私にはさっぱりなのですが

もくもくもく

若い頃のオーナー・基本

この煙は……まさか私の体からですか!?

ぽふんっ

姫・基本

むむ、いきなり消えたじゃと!?

奇術師・笑顔

おや、やはり完全な召喚とは行かなかったようですね

師匠・通常

まぁ、残念。もう少し可愛がってあげたかったのに。ふふ

オーナー・基本

師匠、今ので充分です! しかしこうなると、また一からやり直しということでしょうか

師匠・通常

そうする他、ありませんね

姫・笑顔

(もぐもぐ)さぁ、次のお菓子にレッツトライなのじゃー!

執事・悲しい

お嬢様……ドサクサに紛れしっかりと召し上がっておいでとは。

ふぅ。私は今回の旅が終わる時の貴方様の体重が心配です

奇術師・基本

では、またのショーでお会いできることを楽しみに、本日はお別れと致しましょう

マダム・基本

みなさま、ごきげんよう~!

どうやら旅は振り出しに戻ったようですが、

次の目的地はいったい何処になるのやら。

それでは次回

「今宵、荒野の教会にて」

お楽しみに!