恋の催眠騒ぎ第40話「猛烈アピールタイム」

第40話 猛烈アピールタイム

転生した彼女を探すクモとサソリ。

彼らが次に訪れたのは、霧に包まれた古城です。

サソリ・悲しみ

やっぱ変身して忍び込むと、ちょっと悪いことしてる気分になるなぁ

クモ・基本

根性のないことを言うな。次こそ、次こそは彼女を見つけ出すのだ

サソリ・基本

それはいいけど、また昼間だぜ

クモ・見下し

このうっそうとした森と濃霧だ。ここにもろくに日の光が届いていないからな

サソリ・笑顔

お前ってさ、意外と昼間でも平気なんじゃねーの?

クモ・怒り

なにを言っているのだ! 貴様、自分が太陽の下を歩けるからと調子に乗っているな!

姫・基本

そこな二人組。面白い漫才をやっておるが、どうやってこの城に入ったのじゃ?

クモ・笑顔

ん? おぉ、なんと可憐な少女だ! このご令嬢こそが彼女に違いない!

サソリ・悲しみ

んー、確かにこれくらいの歳の女の子だろうなぁ……

クモ・基本

なんだサソリ。うれしくないのか

サソリ・基本

なんかこう、今までと違うんだよなー。感覚がっていうか……ハッキリ言えないんだけど

姫・怒り

なにをゴチャゴチャと言っておるのじゃ。とりあえず、何者なのか答えぬか

クモ・笑顔

うんうん。すでに貴族然とした姿勢が見についているじゃないか

サソリ・基本

オレにはただ態度がデカいだけにしか見えねえけどな

執事・悲しい

お嬢様! こんなところにおられたのですか! またお勉強を抜け出して!

姫・基本

おぉ、よいところにきた。執事、これな二人を知っておるか

執事・怒り

ん? なんですかあなたたちは。だんな様のお客様だとすれば、庭に勝手に立ち入るのは失礼ですよ

サソリ・基本

いや、オレたちは実は……

クモ・怒り

我々はそのご令嬢を迎えにきたのだ。彼女を私の城に連れ帰らせて頂く!

姫・笑顔

おおっ。これはまた情熱的なアプローチじゃな!

執事・怒り

な、ななな、なにを言っているんですか! お嬢様、こんなわけの分からない者たちに惑わされてはなりません!

クモ・怒り

なんだと!? 私と彼女は何度もの転生をめぐる運命で結ばれているのだぞ!

サソリ・笑顔

オレが探してやらないといけないんだけどな

クモ・見下し

そういうわけで、我々が彼女を連れ帰る。これまでご苦労だったな、使用人の若者

執事・怒り

なにを勝手なことを言ってるんですか! 私のお嬢様を誘拐などさせません

照れ

私のいとしいお嬢様。アンジールをお食べになるあの恍惚としたお顔をみすみす渡せるものですか!

クモ・見下し

ほう。どれだけ彼女のことを知っているかで張り合おうというのか

クモ・基本

私も愛の深さでは負けん。どんな宝石もかなわない瞳の美しさと言ったら……

執事・基本

お嬢様の涼やかな声で名を呼ばれるならば、私は命も投げ出せます

クモ・基本

どんなに上質な生糸よりも滑らかな髪を、私はいつまでも語ることができる

執事・笑顔

ならば私は、彫刻のように完成されたお嬢様の指に愛をささやきましょう

クモ・怒り

サソリ、お前もなにかアピールをしないか!

サソリ・照れ

お、オレか? オレはやっぱり、やさしいところが好きだな……オレが遊び回ってても、本気で心配してくれてさ……

サソリ・照れ

あと、ほかには……

執事・怒り

ならば私は……

クモ・怒り

それをいうならば……

ワイワイガヤガヤ!

姫・照れ

ふむふむ、3人からそれぞれ、これほどまでに愛をささやかれるとは、いい気分じゃのう

姫・笑顔

わらわもモテモテで困ってしまうわ。おーっほっほ!

姫・基本

おっと、そんなことを言っておる間におやつの時間じゃな。おーい執事、執事ー

姫・基本

聞こえておらんようじゃ。まぁよい。わらわは先に城に戻るからな。言ったからなー

…………

………

……

執事・悲しい

……はっ!? そういえば、お嬢様はどこに!?

クモ・怒り

なんと、いなくなっているではないか!

執事・悲しい

ま、また私の知らない間に……お嬢様、お嬢様ぁぁ!

ダダダダーッ!

サソリ・基本

おー、すげースピードで走り去っていった

クモ・見下し

ふん、他愛のないやつめ

サソリ・悲しみ

やっぱり、あいつの匂いもかなり弱くなってる。どうやら、またハズレみたいだな

クモ・基本

そんなことだろうと思った。行くぞサソリ。ちょうど我が城も近い。一度帰って作戦会議だ

サソリ・基本

いいのか? 運命の彼女だったんだろ?

クモ・見下し

貴様の嗅覚が違うというのなら違うんだろう。分かっていてニヤニヤするな

クモ・怒り

そもそも、私の運命の君ならば、私が愛を語る場から勝手にいなくなるような無礼を働くわけがない!

サソリ・笑顔

……顔真っ赤にしちまって。恥ずかしいなら恥ずかしいって言えばいいじゃねえか

クモ・怒り

そこ! ニヤニヤするなと言っている!

サソリ・基本

悪かった悪かった。そんなに怒るなよ

今度の目的地でも、転生した彼女を探し出せなかったクモとサソリ。

二回もすれ違ってしまった二人は、無事に運命の相手と

めぐり合うことができるのでしょうか?