女王蜂の王房には、主人公のめのうと輝夜、そして恋のお相手となる、紅玉、白鴎、貴峰丸、虚、燐、皇樹の6名の男性キャラクターが登場します。
女王蜂以外にもモブキャラとして「働き蜂」と蜂が食べる対象である「ヒト」が登場します。彼らはなぜいるのか私なりに考えてみました。
働き蜂は百合属性を彷彿させる?
女王蜂の王房では稀少な存在とされる、雄蜂(男性キャラクター)。
女性は働き蜂として、宮殿で働いています。めのう編の冒頭では、皇樹と中庭で戯れている働き蜂もいました。
私は先入観で「女性向けゲーム」=「BLゲーム」=「女性キャラは不要」だと思っていました。これが大きな勘違いで、女王蜂の王房では、女性のキャラクターも大きな存在感を放っています。
そもそも女王蜂の王房じたい、輝夜とめのうのいびつな関係が主軸になっており、これが百合を彷彿させます。もちろん「百合キャラ」として攻略できる女性を登場させて、そのキャラとあからさまな出来事が……というのはありませんが、働き蜂たちが輝夜の噂をしていたり、めのうの世話をするのは、二次創作や妄想の余地を残しているのではないかと思いました。
ノベライズでは、めのうとその侍女、コハクとの会話にも少なからずページが割かれています。
「でも、これからは、以前のようにお部屋を出て、お顔を見せてくださったり、皆とおしゃべりをしてくださったりなさいますよね? そうですわ。めのう王女様が女王様になられれば、きっとこの国はもっと明るくなりますね。王女様の大好きなお花の香りと、甘い焼き菓子の香りでいっぱいに満たされたような、温かくて優しい雰囲気の国になると思います!」
コハクはやや興奮気味にまくし立てた後で、またハッとしたように口をつぐんだ。思わず、くすくすと笑ってしまう。
「あの、私つい。すみません、おしゃべりが過ぎました」
「いいえ、いいの。ありがとうコハク。あなたのおかげで少し気分が明るくなってきたわ」
「本当ですか!」
心底嬉しそうに、ぱっと笑顔を咲かせる。その笑みを見ていると、本当に心が和んだ。だって彼女は、以前と同じ彼女だから。
男性向けギャルゲーでは同性キャラは情報をくれる「いいやつ」か、恋路を邪魔するセレブキャラ(たいてい変態)ですが、乙女ゲームでは同性キャラを大切にする文化があるのだと素人ながら感じた次第です。
汚さを浮き立たせる動物的な存在、ヒト
一方ヒトです。女王蜂の王房に登場するヒトで固有名詞があるものは多くありません。中年、少年など年齢の差はありますが、グラフィックは使い回しのことがほとんど。
ヒトは基本的に良い行いをゲーム中ではしません。蜂の価値観で描かれているからだといえばそれまでですが、めのうたちを犯そうとする、殺そうとする、(蜜を)食べようとする、ろくなことをしませんよね。
女王蜂の甘美なる交合において、男性キャラクターたちはマニアックな性癖が細かく設定されていました。
ヒトよりもよほど悪人としての性格を持たせやすい存在に見えます。
しかし、そうはなっておらずあくまで性癖なのです。
蜂:セックス、どろどろ恋愛、女性の情念、男女の禁断の愛
ヒト:猟奇的描写、動物としての本能
蜂もどす黒い欲求が存在しないとはいえませんが、そこからは解き放たれています。女王蜂の王房の世界では、ヒトは人間ではなく、ヒトという名前の動物なのです。だから、担当する欲求もより低次元の本能的なものになるのではないでしょうか。
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