第16話 脱出作戦に謎の2人組登場!?
~前回までのあらすじ~
城の庭の木に、穴を見つけたお嬢様。
以前、奇術師に出会った穴だと意気込み
執事を連れて穴の中へと入りましたが……。
さてそこでは奇術師とマダムが逢瀬中でした。
お茶会にも巻き込まれ、一体どうなるのでしょうか?
…………。
あの、聞こえないのですか? 帰る方法を教えていただきたいのですが。
…………アナタノコトバ、ヨクワカリマセーン!
執事さん、ごめんなさい。悪気はないのです。ただ少し、彼は不器用なだけで。
私と話すときはいつも言語に不自由なさっているようですが……。
あら! まあ、大変! そろそろ主人が帰ってくる時間だわ。帰らなきゃ。
何じゃと。だったらわらわも一緒に連れて帰れ。もうこんな不便な場所へは二度と来んぞ。お、お、お菓子にも釣られんからなっ!
ごめんなさいね、お嬢様。私、お先に。
スタスタ
あ……消えました。
くぅ……! 逃げられたか!!
くくっ。可愛らしいお嬢様。ご自分の意思で来られた方は、ご自分の力でなければ帰ることは叶わないのですよ。そんなに私に早く会いたかったのですか?
な、何を言っておる! 貴様の正体を突き止めようとしてやっただけじゃ!
そうです。お嬢様があなたのような方にほだされるなど、あり得ません。
くくくっ……そうでしょうか。お嬢様、どうせ帰ることは叶わぬ身。ごゆっくり、カレーなどいかがですか?
ん……!? すごい香辛料の匂いですね。何カレーなんですか。
…………。
確かにすごいぞ。これはどんなカレーなんじゃ?
先日も宴の席でお配りしたインドカレーです。本日は少し工夫を凝らして、辛さ1UPです。
…………。
おお! わらわは辛いものも好物じゃ。
ではどうぞ。
パッ
おおおおお! 一瞬でテーブルにセッティングされたぞ。美味そうじゃ! いっただきまーす!!
お嬢様! またそんな怪しいものを何のためらいもなく口にされて……!
ん! 美味いぞ! この辛さ、最高じゃ。
あくまで甘口ですから。
おい、執事。ではデザートも作れ。辛いものの後には甘味じゃ。
甘味……しかし、材料も何もございませんので。
ポンッ
??
???
子ウサギさんからは、いちじくの香りがしましたよ。
奇術師は、ぽんっといちじくを差し出しました。
おおおー!! わらわの好物がよくわかったな。
くくっ。可愛らしい方のことは、何でも分かってしまうのですよ。
ではしばらく、ここにいてやってもいいぞ。美味いものがたらふく食えるしな。
お嬢様! それはなりませんっ! さあ、帰りますよ。城に戻ればいくらでもお菓子をお出しします。
嫌じゃ。
お嬢様!
くくく……よほど、お気に召していただけたようですね。
と、その時です。
どこからか怪しげな声が風に乗って……。
クスクス……何だかここ、面白いことになってるみたいだね、にーさん。
クスクス……そうですね。可愛らしいお姫様は、ごねていても可愛らしい……。
んっ!? 何奴じゃ!!
お嬢様、私の側を離れないでください。
クスクス……怖がることないよ。なーんにもしないよ。
ただ、よければ帰る道を教えてあげようかと……。
ふう……またあの兄弟が……。
な、何者なんじゃ! 姿が見えぬぞ!
滅多には見えませんよ。まあ、時々姿を現しますが。
わ、訳が分からん!
もっとあんたと仲良くなったら、姿見せるよ。そしたら一緒に遊ぼーよ。
おいたが過ぎると良くないですよ。
別にそんなんじゃないし。まあ、今日はいいや。ほらこっちおいでよ。帰る道、教えてあげるよ。
ビュウウウ
か、風が……!
お嬢様。行ってはなりませんよ! 私にしっかりとおつかまりください。
風の示すまま、行ってはいかがですか。彼らはいつも、来客の道案内をしているようですよ。
なに……?
しかし……。
ほら早く。早くおいでよ。
怖がることはありませんよ。何も……そう、何もしませんからね。クスクス……。
クスクス…………。
さて、お嬢様と執事は一体どうなったのでしょうか。
これまた怪しげな兄弟の登場ですが。
おそらくきっと、大丈夫でしょうね。
あの2人のことですから……。
とりあえず今回のお話はここまで。
また楽しい仲間達が戻って来る日をお待ち下さい。
それでは、またお会いできるその日まで――。
いい加減に、帰る方法を教えていただけませんか? お嬢様も困っていらっしゃいます。